アクマでもマジ!シャン物語

天獄橋蔵

第1話 アクマでもマジ!シャン!参上!

アクマでもマジシャン物語


 その人が一番大切にしているモノを上下させる事が可能な魔法使いが要る。これはアクマでもマジシャン物語。


 一章 大丈夫デスカウンター。


 俺が湯巡りをしていて、ある温泉宿の浴室から上がる時の事だ。服を着ようと、パンツを履いてたら少しヨロけたらしく隣の人が、「大丈夫ですか?」と心配し声をかけてくれたのだが、「大丈夫デス。」と返してしまった。

その時!その人の身長が縮んでしまった。目測で5cmは縮んでしまっただろう。

「アクマでもマジ!シャン!」


 二章 ハイかイエスかまる。


 温泉宿の浴室で着替えをする。青いzipパーカーと黒いジーンズに、胸に843とプリントされた白いTシャツが眩しいオーラを放っている。

着替え終わると内心、『やべぇ』と呟きながら、売店でゼロコーラを買い、喫煙所でタバコを一服する。タバコを吸いながら、『まぁ大丈夫かな?』と内心呑気に考えてたら、知り合いの里というおばさんに会った。

俺はアクマでも近所の湯巡りしかしないので、顔なじみが増えた。里もその一人である。

 俺は少し考えて閃いた。『そういえば昔、チャットで、ハイかイエスかまるって使ってたな?背を伸ばす魔法に応用しよう。』アクマでもマジ!シャン!は瞬間的に知恵を記憶から引き出して組み合わせて使い道を考えた。

事情を知らない里に協力を頼み、理由も説明しないまま、里の好きな食べ物や好きな飲み物等を聞いた。

「里さんの好きな飲み物はコーヒーですね?」「はい」×3。こんなやり取りだったが、どうにもしっくりこない。

 別の人……白い服の男性が来て、その人はこの前アクマでもマジ!シャン!が身長を奪った相手だ。目測で16cm程減っている。というか不可思議現象を起こせるのが、俺しかおらず、多分俺が悪いんだよなーと思いながら、里にもう一度頼み、あの白い服を着てる人が身長が伸びる様に祈ろうって協力を仰いだ。『ハイかイエスかまる』を練り直し、早速更新した呪文を詠唱する。

「あの人の身長が伸びたら良いなと願う?ハイかイエスかまるで答えなさい。」

「ハイ!」

「自己中心、自分勝手、無責任な悪人であり腹を切って死ぬべきであると選挙演説で述べたのは、又吉イエスである。ハイかイエスかまるで答えなさい。」

「イエス!」

「俺が吸っているタバコの銘柄は、通称マルボロである?ハイかイエスかまるで答えなさい。」

「まる!」


※ちなみに里はよく意味が分からずに協力している。


 すると、白い服を着てる人の身長が一気に伸びた。目測で7cm程伸びてる。履いてるジーンズの裾から踝が見えるくらいには変化している。白い服の人はキョロっとして、こっちを見て、会釈してくれた。里は驚き、「あんた凄かねー!あの人も伸びてる!」と言って指を指した方向に共通の知人がいた。


 三章 パーカー手品。


 里が指を指した方向には、知り合いの石矢が居た。タバコを吸い終わった俺達は喫煙所から出て石矢に近づく。

「石矢さんあんた背が伸びたねー。」

「伸びてないよ?」

「伸びたら手品やん?」

 俺はパーカーから輪ゴムを取り出して、「二人に手品を見せる。」と言って、両手で輪ゴムを引っ張り、パチンとした。普通ならどっちの手に輪ゴムが入ったか分からない様に素早くするのだが、これは手品だ。ゆっくりと輪ゴムをパチンとしたから、右手に入った様に分かる様にスローでやった。

 まずは里にどっちの手に輪ゴムあるか聞いたら、「右。」と答え、石矢は、「いやいや、バレバレやし?」と言った。俺は右手の輪ゴムをパーカーの袖に流し込み、あらかじめセットしていたもう一つの輪ゴムをパーカーのフードから取り出し、ドヤ顔を決め込み。

「アクマでもマジ!シャン!」

決まった!

「凄かねー!あんた何でも出来るねー。」

「いやいや、袖に流し混んでたの見えてたよ?トリックやん?」

これは、ただの手品だが、アクマでもマジ!シャン!のマジックはエンターテイメントでなければならない!

「石矢さん、後ろの鏡見てみ?身長伸びる魔法掛けた!」

「え?……え!」

石さんは後ろを振り向いて、自分の身長が伸びている事に気付いた。

 俺は温泉を上がり服を着ているのだが、青いzipパーカーのファスナーを下ろし、胸に六芒星に843とプリントされてるTシャツをチラ見せしながら、ドヤ顔イキリ!

「どら◯もんがいるからのび◯やろ?」

「上手い事言うねー!」

「アクマでもマジ!シャン!」


 四章 DTイキリ。


 ホテルのロビーで偶然にも元カノと再会して、少し話した後。「バイバイ。」とお互いに言えた。横の奴がイキナリ、「お前さっきからアクマでもマジ!シャン!とかイキってた癖に非童貞かよ?」とか下らない事で絡まれる。

んでね?僕はね?キレたね!

「俺は童貞だ!」

「ウソだ!彼女居たんだろ?」

「やってない!俺は童貞だ!」

「ウソだ!童貞なら童貞って証拠だせ!」

僕はね?勝ったね!

「俺が童貞だという証明は、証明する手段が無い。それは悪魔の証明!フィニッシャー悪魔の証明により童貞魔法使いの勝利!アクマでもマジ!シャン!」

「く、そ、そんな馬鹿な……」

「ウソだと思うのならウィキペディアを見てみろ、童貞か非童貞かを見分ける方法はまだ科学的に方法は無い。」

「ス、スイマセンデシタ!」

論破して悪ノリになる俺。まあ、いつもの事だ。

「お前を信じるな!俺が信じるお前を信じろ!俺が信じるカルト宗教団体マジシャンズを信じろ!」

「は?」

「入信するには経本電子書籍版千円製本五千円月刊誌無料を信じろ!」

イチャモン付けてきた若い兄ちゃんは、虚空に視線を彷徨わせた。うんと大きく頷き。「あばよ、ダチ公!」とダッシュで逃げて行く。いつもの事だな。と思いながら虚空を仰ぎタバコを吹かす。紫炎を吐きながらぼっーとした虚ろな目を空中に泳がせる。

「ペテンシじゃないよ?アクマでもマジ!シャン!」


第五章 ババサーチ。


ここは温泉宿。温泉上がりに浴場を出たら娯楽室がある。カウンターでコーヒー牛乳を飲み干した後は遊び場に踊り出る。娯楽室には麻雀、トランプ、花札、チェス、将棋、卓球などある。

人の勝負運すら上下させるのが、アクマでもマジ!シャン!である。

トランプ卓で女性4人がババ抜きをしている。ババ抜きらしからぬ可憐な女子が1人混じっていた。恐らくこのババの誰かの孫娘なのだろう。

そうこうするうちにババの1人が、「ルールが分からないからしない。」と投げ出してしまい、視線が俺に向かった。俺は嬉々としてババ抜きに参加した。

ジョーカーはまさにアクマでもマジ!シャン!そのもののカードだ。能力的に勝ち負け関係無しなら相性抜群のゲームである。

俺の基本能力はテレパシーである。

ババ抜きが始まり時計回りにゲームが進む。1ゲーム目は、俺と若い子が残り1対1のゲームになった。俺はわざと手持ちのババの位置をテレパシーで、『左手がババ。』と教えて勝たせた。若い子は不思議そうな顔をしていたが、カードを切る間に大まかな事はテレパシーで済ませた。『テレパシーは老人には聴こえないから、君も老人になったら聴こえなくなる。このイカサマはルール違反では無く、チートだから気に病む必要は無い。』

ババ抜きの2ゲーム目が始まりばば達は必死でトランプ遊びに興じてるが、気の毒な事にどうでもいいテレパシー能力の知識を際限なく聴かされてる若い子が可哀想だった。若い子とババの1人が残ったので、ババは視界に入ってる位置だったので、『右手がババ。』とババの位置を伝え。若い子が上がりを決めて完全勝利を収めた。

人の勝負運すら上下させるというか、一方的に下げさせるのは一番得意である。

『アクマでもマジ!シャン!』


第六章 死神憑き。


脳内で若い子に謝りながら、アクマでもマジ!シャン!と垂れ流す俺。

まぁこんなもんだろ!次は誰と遊ぼうかな!

と考えてたら、トランプを遊ぶ者は1人もいなくなった。

仕方無く隣の部屋に行き麻雀を眺めてると、知り合いの畳が麻雀を他3人と打っている。

何食わぬ顔で畳さんの後ろに付いてみると、畳は嫌な顔をしだした。

それもそのはず、俺は、常時テレパシー垂れ流しで、麻雀等の隠れてるモノの読み合いのゲームとは相性があるが、他人を妨害するにはうってつけの異能力である。常時後ろに立って憑いてる人の麻雀牌を透かしてしまうのだ。

人の勝負運すら上下させるのがアクマでもマジ!シャン!である。憑かれた人に勝ち目は無くなる。

これはたまったものではない。コンビでグル打ちするならまだ使い道もあるが、ただ後ろに突っ立たれてるだけだと、まさに〝死神に目を付けられた状態〟である。

畳は一回も上がれず最下位になった。

人の勝負運を上下というか、下げっぱなしにする!

「アクマでもマジ!シャン!」


第七章 人払いの巻物。


イチャモンを付けてきた畳をなだめて、お帰り願った。

(麻雀の勝ち負けでイチャモン付けられるとはね、ギャンブルはしない一匹狼の俺が泣くぜ)

その時である。パーカーが引っ張られた先に円らな瞳をウルウルさせてる小さな女の子が……居た。

(よりにもよってなんで俺なんだ?ってか子供なのに金髪なんだが?親はヤンキーか、外国の方か?)

色々考えても仕方ないので、アクマでもマジ!シャン!お得意のテレパシーで迷子放送してみる。

『迷子居ますよー!6才くらいの金髪の女の子!親御さん居たら至急ぐーたら温泉宿一階娯楽室まで!』

しかし、この子はどうしてこんなところに来たのかな?ここはぐーたらしてる奴しか来ないのに、テレパシーで呼びかけて十分は経ったが親らしき人は迎えに来ない。

女の子が娯楽室の本棚から本を持ってきた。読んでほしいみたい。本を眺めると自然に台詞が垂れ流しなのに女の子が気付いて大喜びしてる。

すると娯楽室から人がごっそり消えた。ジジ、ババは残ってるが、後は居なくなった。

テレパシーで人の注意を引く事が、引かせる事になるとは全然知らなかった。

『あー、俺が本読んだらこうなるのか……』

「人払いの巻物と名付けよう。アクマでもマジ!シャン!」


第八章 超能力開発講座。


人払いの巻物のせいで、俺、女の子とジジババのみが残った。女の子はキョトンとしてて、「おじさんだあれ?」と聞いてきたので、テーブルの上のトランプのデッキを取り、女の子に一番上のカードを見せて、女の子が覚えたか確認する。

「覚えた?」「うん。」

女の子が覚えた事を確認して一番上のカードを指で弾くポーズをして、女の子に一番上のカードをデッキの真ん中に入れる様に指示して決めセリフ。

「このカードはさっきのカード?」

「うん。」

「神に誓って?」

「うん!神に誓って!」

そうして、真ん中に入ったはずのカードなんだが、再びデッキの一番上のカードを指で弾く……すると、真ん中に入れたはずのカードが一枚めくると一番上に来てた。

カードの位置すら上下させるのがアクマでもマジ!シャン!である。まぁこれは単なる手品だが……

「すっご〜い!」

「アクマでもマジ!シャン!」

自己紹介を済ませて、女の子にも名前を聞くと、ユルシちゃんというらしい。

「ユルシちゃんもマジシャンになりたいか?」

「うん!」

迷子のハートも上下させるのがアクマでもマジ!シャン!だ。

これ親見たら止める光景なのかな?まあいいや。

「じゃあまずは、超能力開発講座だ!」

「うん!」

スペードのAハートのAダイアのAクラブのAジョーカーの5枚を裏返して、当てようクイズを始めた。普通なら当てるのは確率でしかないが、なんせ俺にはテレパシー能力がある。

俺がカードをチラ見してユルシちゃんにテレパシーを飛ばし、ユルシちゃんが気付いてカードを当てていく。繰り返して百発百中になった。

そして今度はユルシちゃんに親番を回し逆に当てようクイズをやらせる。

ユルシちゃんはテレパシー等使えない。

分かるわけない?いやいや、これがカードの角の浮き具合や、シワ、印刷の掠れで全部分かる。

当然。全部当てる。流石は俺だ!

カードを1枚指定して宣言する。

「このカードはジョーカーだ!神に誓って!」

「本当にジョーカー?神に誓って?」

ユルシちゃんが段々と悪ノリしてきた。カードを指でつまみ、強くコールする。

「神に誓って!」

カードをひらりと捲り、宣言通りジョーカーが出る。

「すっご〜い!」

「アクマでもマジ!シャン!」


今度は違うマジックを仕込む。ラッキーセブンとい手品でトランプのスートの7だけ4枚使って1枚引かせてその引いたカードを4枚に戻して引いた1枚を当てるという手品だ。

一回ぱっと手本を見せて次はユルシちゃんにやってもらう。やり方は教えずに適当にラッキーセブンをやってもらい。イカサマなんだが引いたスートがスペードだったから頭の中で『スペード。』と念じる。

ユルシちゃんは「これ!」っ言ってドヤッとスペードの7を出した。

「おじさんが選んだカードは、これ!神に誓って!」

「正解!凄いねユルシちゃん!マジシャンみたい!」

イカサマだが超能力開発講座は盛り上がる。

ユルシちゃんはケタケタ笑ってる。

ただ……小さな子供だとまだ善悪の判断が付かないだろう……だから……


「天使と悪魔と人間とどれが一番悪いか分かる?」

ユルシちゃんはキョトンとした顔で不思議そうな顔をしてる。

「……?何でそんな事聞くの?」

「おじさんはね……アクマでもマジ!シャン!だよ?」

「じゃあ、人間が悪いの?ユルシが悪いの?」

心が張り裂けそうだ。言葉を選んで添削しようにもアクマでもマジ!シャン!にそれは叶わない。言葉をストレートに綴る。

「違うよ。悪魔が一番悪いんだよ……いいかいユルシちゃん。おじさんはねアクマだから悪い大人なんだよ?」

「どうして?おじさんは良い人だよ?ユルシは好きだよ!」

「そうか、おじさんはカッコイイかい?」

「うん!ユルシの天使だよ?大きくなったらユルシもマジシャンになるよ!」

!!

心が揺らぐ俺は悪魔だ……ユルシちゃんが大人になったら……と想像してしまった。

それがいけなかった。

「うん。いいよ、ユルシはおじさんが好き!大人になった時に……」

「待った!その先は口に出したらいけない!」

俺は咄嗟にユルシちゃんの目の前に手を出してストップの合図を掛けた。


その時だった。


「あ、やっと見つけた!何やってるのユルシちゃん!探したんだよ!」


金髪のDQN系の女性が、娯楽室の入口にいて、ユルシちゃんを呼んでる。歳の離れたお姉さんか?もしかしなくても母親なのか?俺より大分若いぞ?


「ママあのね。マジシャンのおじさんに遊んでもらったの。」

「……娘がお世話になりました。何もお礼出来ずに申し訳無いです。」

「いえ、お構いなく。」

お世話になりましたあたりからメンチ切ってきてる……

「今何か?あれ?何か聴こえて……」

ヤバい一発チューニングタイプだ。若い女性に特に多いが、間が良くない。

「気のせいですよ……」

「おじさんは魔法使いだからテレパシーが使える凄い人なんだよ!」

「何それきも!ユルシちゃん早くいくよ!こんなのと関わっちゃダメだかんね!」


ユルシちゃんは母親に手を引かれて、寂しげにこっちをチラチラ見ながら、遠くに歩いていく。


「おじさん!ユルシは大きくなったらマジシャンになるね!また会えるよね?」

(おじさんはねアクマでもマジ!シャン!なんだよ?おじさんの事は忘れなさい。)

一層力を込めて念じた。ユルシちゃんは言葉にしてしまった。用心に越した事は無い。今は念じるしか無い。

「行くよユルシちゃん!」

「えーん!嫌だよ!まだ遊びたいよ!」

俺は人間を超えた魔法使いだが、だがだからこそ無力な存在でもある。何も出来ずに泣いてるユルシちゃんを見送るだけだ。

振り返ったユルシちゃんが、涙を拭いながら叫ぶ。

「おじさんはユルシの天使だよ!」


遠くに行ってしまったユルシちゃん。もう会う事も無い……だろうが、ユルシちゃんは言葉にしてしまった。マズイかもしれない。ユルシちゃんには魔法の天稟があり、それもかなりの逸材だった。はっきり言って天稟だけならユルシちゃんの方が少しだけ上に見えた。嫌な予感がする。

嫌な予感ほど的中するものは無いから、逆に考える。

(ユルシちゃんが大きくなったら現実見てありえないって思い返す。女の子なんだし結構現実見るだろ、あの母親見てもそう思える。ふう、これで良し。)

強く願った。届くだろう。


『ペテンシじゃないよ?アクマでもマジ!シャン!』


第九章 カラオケイキリ。


ユルシちゃんを見送った帰りに友達を呼び出してカラオケ屋に集合する。

〝カラオケ魔招き〟二階受付を4名様で済ませる。

店員はニコッと冷や汗をかきながら、「201号室です。ごゆっくりお楽しみください。ドリンクは1時間1ドリンクとなっております。」と慣れない客に慣れてない対応をする。

201号室に入り全員オレンジジュースを注文させる。これからみっちり4時間アクマでもマジ!シャン!リサイタルだ!コイツらには一曲も歌わせない!4時間と短くも長くもないリサイタルが幕を開ける。


「僕の変わりが〜♩」

「選ばれし者〜♩」

「憧れに〜♩」

「限界など〜♩」

「現実になるだろ〜♩」

「ナンバーワンに〜♩」

アクマでもマジ!シャン!は歌詞で世界一、唯一、選ばれし、憧れを手にする系でイキリ倒す!モブキャラの友達には悪いが俺は特別な存在なのだ!

友達は全員ウザそうに聞き入ってる。しゃーないやん?アクマでもマジ!シャン!

多分つまんない事に一曲も歌えず俺の音痴(自分で自覚ある音痴だからまぁまだマシな部類だと思ってる)な知らない様な知ってる様な曲を聴かされる。

コイツら今どんな気持ちなんだろうか?

まぁ考えるより歌う事に専念しよう。

実は持ち歌でイキリ出来る曲少ないので、特にイキる気無い曲も合間に歌ってる。


「999〜♩」

「もしも明日この〜♩」

「空っぽだよ、透明な君がくれた水が欲しい♩」

友達はサイドメニューばかり食べてるまぁいいや。どうせつまんないだろうしー?

んでね?シメはいつもの4曲。

「永遠のチェイス〜♩」

「二次の彼方〜♩」

「誰が見ている〜♩」

「どんな夢も叶う〜♩」

こんな感じのシメ括りだ。

逃げたら追いかける→二次被害チラ見せ→誰か見ててもこのカルト宗教団体マジシャンズは虚構の存在→どんな夢も叶う!の意味。アクマでもマジ!シャン!

良く言えば友達なのだが、実際は俺が作ったカルト宗教団体マジシャンズの信者達だ。


「二次の彼方へ行きたいか!」

「いぇすだね。」×3

「誰も損しない、誰も損しない、誰も尊士無い。」

「いぇすだね。」×3

「誰も損しない、誰も損しない、誰も尊士無い!神に誓って?」

「神に誓っていぇすだね!」

「俺さえ良ければ全て良し!アクマでもマジ!シャン!」

「いぇすだね!」×3

これでいいのだろうか?神に誓って言うと、俺に悪意は無い!アクマでもマジ!シャン!


第十章 その夢トラップ。


その後はファミレスに4人で屯して、それぞれナンパする。と言っても、ネットのチャットサイトでのナンパだ。皆ブサメンなのでリアルナンパとかはミラクルは無い。

俺はチャットナンパではヨイショは要らない。そんなに困ってない。

アクマでもマジ!シャン!の手口を一部公開しよう。


❇︎❇︎❇︎


チャットサイトにて。


アクマ「俺が小説家になる夢が叶ったら、その時は付き合って下さい!」

ゆめ「叶ったらね〜」

アクマ「神に誓って?」

ゆめ「神に?いいよ〜?」

アクマ「やった!もう小説家だから付き合ってね!」

ゆめ「え〜、う、うん……」


※フリーランスの小説家である。


付き合っても短い夢へと消える。多数付き合ったが、どの人も儚い夢へと消える。この、夢が叶ったらトラップでは短い夢しか見れない。浅い眠りのままでは深く眠れない……

「浅き夢路では桜は咲かない!アクマでもマジ!シャン!」


第十一章 受賞トラップ。


フラれてばかりなので、今度はカルト宗教団体マジシャンズの信者集めを始める。

同じチャットを利用してメンバー各々が、アクマでもマジ!シャン!が作成したテンプレートを使い信者集めを開始する。

ファミレスでコーラやフライドポテトを注文して飲み食いしながら、ブサメンの俺達がスマホをパチパチと弄る異様な光景が完成した。

その異様な光景を更に際立たせてるのが、アクマでもマジ!シャン!だ。

角のテーブルの通路側の席に座りテレパシーを垂れ流しにしてる。

「今月はノルマ月一人だ。連帯責任だから気合入れていけよ!」

「いぇすだね。」

ナンパは失敗したもののネットではドラゴンの如く暴れ出すカルト宗教団体マジシャンズメンバー達だ。頼もしい限りだ。俺は人脈に恵まれたのを嬉しく思う。

信者集めの流れは……

アクマ「俺が小説で賞を取ったら本買ってくれる?」

モブ「取れるわけ無い!」

アクマ「もう賞取ってる!買え!」

モブ「ウソだ!」


※ネットの二次創作部内の賞を受賞してる。


アクマ「ウソじゃない!これを見よ!」

モブ「……」

受賞ページを見せる。モブキャラは黙るが、黙らせず買わせる。

アクマ「買え!お前は負けたんだから言う事を聞け!」

モブ「買うわけ無い、さよなら!」

受賞トラップでは中々釣果が無い。この日は誰も釣れなかった。

今月のマジシャンズサークルは参加費の他に罰金を徴収した。

「これにて一件落着!アクマでもマジ!シャン!」


第十二章 神の領域イキリ。


帰り道コンビニの新人店員が俺をチラチラ見てる。いつもの様にマジシャンズの一人に頼み店員に話かけさせる。

(黒いパーカーのお前、お前だよ。店員に話しかけてみて。)

テレパシー垂れ流しして、店員はおどおどしてる。黒いパーカーのマジシャンズのメンバーが、店員に話しかける。

「神の声が聞こえたからナンパしに来ました。」

「はあ、でも、えっと、なんですか?」

「ですから、神を呼びますね。神様こちらです!」

呼び声に答えてアクマでもマジ!シャン!が颯爽登場。マジシャンズを従えてコンビニの新人店員をイビリにかかる。

(俺を誰だと思っていやがる!腹話術だと思ってるのなら、両耳塞いでよーく聴きやがれ!)


※テレパシーなので両耳塞いでもよーく聴こえる。


「な、なんなの?え?え?」

新人店員が蒼ざめたままで動かなくなったので、いつもの様にその後のケアをしだした。

「テレパシーってあるって思うか?お前ら?」

「常識的に無いですかね?」

「そそ、無い無い。あったら人智を超えているから、神の領域だな。」

(つまり俺が神だ!)

新人店員は蒼ざめたまま休憩に入った。悪い事をしたのは向こうだろう。テレパシー垂れ流しの客がいる事を教育してない店側も悪い。

店長が慌てて新人に駆け寄り、ぼそりと、「あの人はいいの……」と返してる。まあいつもの事である。このコンビニに中々新人が定着しない理由の一つであるかも知れない。

「テレパシー?あったら神の領域!アクマでもマジ!シャン!」


第十三章 神に誓って。


ユルシちゃんと温泉宿で出会ってから一年ぶりくらいかな?ユルシちゃんと再会した。偶然にも図書館で一緒になった。

ん?図書館にテレパシー垂れ流しのアクマでもマジ!シャン!が何故行けるのかって?そりゃ非公式扱いだからだよ。録音も何も出来ないから、何も文句来ない。

ユルシちゃんは小学生になったみたいで、ランドセルが隣の席に置いてある。こそこそと話しかけてくるユルシちゃん。

「おじさん、久しぶり、ユルシは元気だったよ。」

(うん、俺も元気だよ。)

「今月バレンタインだね……おじさんは彼女いるの?」

(いないよ。)

「じゃあユルシがチョコあげるね……」

(いや、悪いよ?魔法使いはチョコを食べたら死ぬかも知れないんだよ?)

「なんで?」

(人間に恋したら死ぬんだよ……)

「そっか、でもバレンタインの日にまたここで会ってよ?」

「それくらいならいいよ!アクマでもマジ!シャン!」


それから少ししてユルシちゃんは家に帰った。バレンタインの日何になるのやら?


❇︎❇︎❇︎


バレンタイン当日。

夕方に図書館に行ってみた時間まで決めてなかったけど、学校が終わる時間は大体このくらいだろうと踏んで、図書館に足を運んだ。

ユルシちゃんが前居た席に座ってる。漫画が置いてある透明な円柱型のカプセルの様な一室。

隣に座る。

「来たよ。待たせたかな?」

「ううん、ユルシも今来たよ。これ、チョコ。」

「ありがとう。ん?5円チョコ?今時売ってあるの?」

「数を数えてね。じゃあ、行くね。また会えたらいいな。」

「うん、また会えたらね。」

ユルシちゃんが泣きながら図書館を後にした。

何故だろう?何かした?周囲の目線が痛いのでとりあえず家路についた。


❇︎❇︎❇︎


帰ってみるなりユルシちゃんが言っていた。数を数えてが気になり、兎に角数えてみる。

1.2.3.4〜全部で13枚ある。何だろうか?不吉な数字。トランプのキング。タロットの死神……


俺は最低な人間だ。いや、もう人間じゃないんだけど、あんなに小さな子供を本気のほの字にしてしまった。


人間に恋したら死ぬって言った後に、ユルシちゃんから13枚のチョコ。死ぬ気で恋しないと、申し訳ない気持ちと、幼い子供をたぶらかした人で無しな気持ちと……


「おじさんはね、ユルシちゃんの天使なんかじゃない。アクマでもマジ……シャン……」

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