美空は昴のことを見つめる。

 昴は綺麗な顔立ちをしている。

 昴の透明な(まるで宇宙のような)黒い瞳が、じっと美空の顔を見つめている。

「どうかしたの?」

 美空はいう。

 昴はいつものように無言。

 無口な昴はあまり美空とたくさんお話をしてくれない。(さっきの別にだって、珍しいくらいだった)

 まるで電波が届いていないように、美空の言葉は昴まで届かない。

 昴は美空のすぐそばにいる。

 二人の距離は人一人分くらいしか離れていない。

 でも、実際にはもっと、もっと、とても遠い距離がこの空白の中にはあるような気が美空にはしていた。

 昴は無言のまま席を立つと、そのまま歩いてドアを開けて、天文部の部室から一人で外に出ていってしまった。

 美空はそんな昴のことをただじっと目で追っているだけだった。

「……トイレかな?」

 美樹を見て、美空は言った。

「さあ、わかんない」美樹は言う。

「相変わらず静かなやつだね。昴はさ」笑いながら、美樹は言う。

 その言葉を最後に天文部の部室の中は無言になった。

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