夜空の向こう

雨世界

1 この星空の向こうに、君(あなた)がいる。

 夜空の向こう


 プロローグ


 この星空の向こうに、君(あなた)がいる。


 本編


 星の光。……本当に、美しい光。

 

 見上げる夜空には満天の星空が広がっている。

 美しい星の光がある。


 そんな美しい冬の星々を見ながら、三峰美空は遠くに行ってしまった藤野昴くんのことを思った。

 昴くんも今頃、私と同じように、この美しい星空を眺めているんだろうか?

 そんなことを美空が思っていると、「美空。なに考えているの?」と親友の畔野美樹に、そう後ろから声をかけられた。

 美空が星空から視線を動かして美樹を見ると、美樹はにっこりと笑って、美空のことをじっと見つめていた。

 美人で有名な美樹は、夜空に輝く星の光に負けないくらいに。綺麗だった。

「別に、なんにも」にっこりと笑って美空は言う。

「嘘だよ。美空がなにを考えていたのか、私が当ててあげよっか?」美空の横に移動して、そこから星空を見て、美樹が言う。

 美空は無言。

 そのまま美空は美樹と並んで、綺麗な冬の星空をもう一度、眺めた。

「昴くんのことでしょ?」

 美樹が言う。

 美空はやっぱり無言のまま。

「美空は昴くんにもう一度会いたいって、そう思っている」美樹が言う。

「うん。当たり。美樹の言う通りだよ」

 観念して美空は言う。

「やっぱりね。そうだと思った」美空を見て、美樹が言う。


 それから二人は、星を見ていた山頂にある天文台の駐車場から移動をして、暖かい光の灯った天文台の建物中に向かって、暗い夜の中を移動する。

「どうして、美空が昴くんに会いたいって思っているって、私にわかったか、わかる?」

 ところどころに立っている淡い光を放つ電灯の明かりの中で、美樹が言う。

「わかんない。どうして?」美空は言う。(本当はわかっていたけど)

「私も美空と同じように、昴くんに会いたいって、ずっと、ずっと、そう思っていたから」星を見上げて、美樹が言う。

 美空は無言。

 ……今度は、天文台の建物の中に入るまで、畔野美樹も、無言のままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る