第4話 後悔
配属から3か月が経過していた
現在、私と同僚の小池は黒塗りのワゴン車に乗っている
例の護衛達と一緒に、指定された現場へと移動中している
自分が勤めていた会社に心霊部門があったことに最初は驚いたが、あまりにも情報量が多くて今は思考を停止している
あれから似たような命令があり、毎回何かに取り付かれた人から物を奪うを繰り返している
いつか警察沙汰になるのではと小心者の自分は悩んでしまう
給料は上がったけどその分リスクも大きくなった
会社を辞めるのも考えないといけないのかな・・・
小池さんはマイペースに移動中はスマホを触っている
護衛の人たちは必要以上のことはあまり話さない、車の中ではそういう沈黙が時には苦痛でもある
考え事をしていると車は繁華街の中にある現場付近へと到着する
「今回の現場はあのビルだ」
英二郎は車の中からビルを確認する
「占いビル?」
「ああそうだ、ここの地下に物があるらしい」
「さっさと終わらせて帰りましょうか」
アルファ《今回は今までと違って妙な胸騒ぎがするな》
「まずは周辺を確認しよう、ガンマはビルの侵入方法の偵察を頼む」
「デルタはビルの上部を調査してくれ」
「ベータは周辺の状況を確認ていくれ」
「俺は集まった情報で気になった場所を調査してみる」
「あなた方はいつものように車で待機していてほしい」
そう言うと男たちは車から出ていった
車からビルを見ているとビルの外で呼び込みをしている人物を発見する
デルタには声を掛けることはなかった、デルタはビル内へと消えていく
男は手当たり次第声をかけているのではなくなにかを物色しているようにも見える
やがてその男は3人組の少女に声をかけ、なにやら話をしている
ベータが近くでその様子を観察している、恐らく話の内容を聞いているのだろう
やがて3人の少女と呼びこみの男はビルの中へと消えていく
それから30分くらい経過しただろうか中に入った呼びこみの男を含め3人の少女が出てくる気配がない
小池さんは相変わらずスマホを見ている、関心が無いようだ
しばらくすると3人が足早に戻ってきた、ガンマは居ない
3人は車へ入ると現状の確認を行った
「ガンマから連絡がつきませんね、捕まったのでしょうか?」
「ガンマに限ってまさかとは思うが、状況からしてそうとしか思えない、油断しすぎたか」
「どうしましょうか?」
「とりあえず現状を確認しよう」
「いまビルの中の占い師はすべて休憩中で1階以上に人がいる気配はない、次は18時からだそうだ」
「このビルは一見小さなビルに見えるが地下は3階ほど確認ができた、しかも3階部分は裏のビルの下まで広がっていて思ったよりやっかいな場所だ」
「ビル1階の地下へ降りる階段には監視カメラがあり、こちらを使うのは難しいだろう、あとは裏のビルの地下2階の部分に扉と、地下3階の下水道から侵入できる扉が確認できた、裏のビルは普通に会社のビルなので複数で入ると怪しまれる可能性が高い、下水道の扉まではカメラもなくガンマはここから侵入したと思われる」
「ところで入り口で居た呼び込みの男が少女達に声をかけ一緒にビルへ入ったまま出てこないのが気になっているのですが」
「1階から上には少女たちは居ないと思うわ」
「んー、となると3人の少女達はビルの地下にいる可能性が高いな」
「ちなみに呼び込みの男は少女達になんと声をかけていたのでしょうか?」
「いや、特に変わったことはない、≪もしかしてあなた霊感があります?もしお悩みでしたらお伺いしますよ、相談は無料ですから、もしかしたら占いの才能があるかもしれませんよ≫
≪この子はたまに気持ちが悪いことを言うから、一回相談してみようよ≫とかいいながら中へ入っていったな」
「普通の勧誘文句にも聞こえますね」
「若い女性なら興味が沸くかもしれないな」
するとアルファが手で静かにするよう合図してきた
どうやらイヤホンから知らない男がコンタクトを取りにきたようだ
「こちらの声が聞こえている前提でお話させていただきます、あなた方が何者なのかは存じ上げませんが、大方の検討はつきます、当然勝手に侵入した訳ですからこのまま警察に突き出してもよいのですが、あなた方の対応次第ではこのまま開放させていただきます、この男を返してほしくば地下3階まで来ていただきたい、待ちしております」
とりあえずこのまま見殺しにはできない
「了解した今からそちらへ向かう」
一度通信を切断した
「とりあえず、身柄は安全なようだな、ガンマが捕まるくらいだ油断はできない」
「おそらく相手も手練れと考えてよいだろう」
「我々3人で救出に向かう、危険が伴うのであなた方はここでお待ちいただきたい」
話を聞いている間、英二郎は厄介ごとに首を突っ込むのはやめようと思っていたのだが、小池さんが動揺して震えている、なにかトラウマでもあるのだろうか?小池さんの姿を見ているとこちらも不安になってきた
「私が一緒に行きますので、どなたかお一人、小池さんに付いてあげてださい」
と言いながらも本心は後悔しており、願わくば断ってくれるとありがたいのにと少し期待はしたが
「了解しました、全力でお守り致します」
≪そこは1回は断ると思っていたのに、即答かよ≫
心の願いも空しく、あっさり受け入れられてしまった
デルタと小池さんが残る事となった
ビルの地下1階の階段の前に立つ
確かに監視カメラがあり侵入者を拒む雰囲気だが、それ以上に何となく不安にさせるこの気配はなんなんだろうか?
いくら屈強な護衛が居るとはいえ、なぜか安心できないこの感情
アルファとベータはいつもと違う緊張感だ、やはりなにかを本能的に感じているのだろう、やはり素人の自分は来るべきではなかったのだろうか、すでに後悔の念が強くなってきていた
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