KemonoFriends-FourSeasons
アルミニウム
きんぐ おぶ とりっく!
「「「トリック オア トリート!」」」
フレンズ達の元気か声が響く。
その声を聞き、俺は用意していたお菓子を差し出した。
お客さんに対しては軽く抱きつくぐらいの悪戯とも呼べない悪戯をしているようだが、仲の良いパーク職員に対してともなるとその程度では済まないからだ。
お菓子を受け取って大はしゃぎで走っていくフレンズ達を尻目に「悪戯されたくない人向けに格安で売ってるお菓子でここまで喜ばれるとは……」と、しみじみ呟いた。
そんなハロウィンの一幕を遠くから見つめる視線があった。
俺はとっくに気付いていた。視線の主が誰かもだ。仮装していたところで分からないはずもない。
その特徴的な
彼女は俺と目が合うとすぐに俺達が一緒に暮らす家のある方を向き歩いて行った。そろそろ帰って来る時間だと圧力を掛けにでも来たのだろうか。
確かに早く切り上げないとサービス残業になりかねない。そうなったら
そこで俺は残った仕事を近くに居た同僚に押し付けて帰路についた。
*
「おかえり……いや、今日くらいはトリックオアトリートというべきか」
家のドアを開けると今度は一人の声。急いで帰ったとはいえ、やはり彼女の方が早く着いたようだ。
「お菓子ならそこに用意してありますから――」
テーブルの方を指さし、言いかかったところで固まる。
おかしい、確かに用意しておいたはずだ。
「どうした?お菓子がないなら悪戯させてもらうぞ?」
ニヤリと笑いながら近づいてくる彼女。やはりどこかが変だ。
ゆっくりと距離を詰めてくる彼女に違和感を覚えた俺は一つの可能性に思い当たり、声に出してみた。
「キングコブラさん、まさか全部食べたんですか?」
というか多分そうだろう。彼女のお腹も少し膨らんでいる気がする。
元動物の頃ならともかく、今の体で丸呑みは健康に良くない、と一言付け加えようとしたが彼女の方が先に口を開いた。
「ふふっ、冗談だ。すまない。
用意してくれていたお菓子ならここに隠してある」
彼女はそう言って調味料や非常食をしまっている戸棚を開けて見せてくれた。
なんだ、そういうことか。と、一度は納得しかけたが、それはそれで辻褄が合わない。
俺の疑問に答えるかのように彼女はこう付け加えた。
「あぁ、これか。そういえばまだ言ってなかったな。
一ヶ月だそうだ」
ほんの少しだけ膨らんだお腹を愛おしそうに撫でる彼女を見て「お菓子は用意してたのにこんな悪戯までするなんて」と、文句の一つも言えなかった俺は、きっと一生、彼女に頭が上がらないのだろう――
KemonoFriends-FourSeasons アルミニウム @WhiteSymbol
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