バディ・ウェポン・オンライン ~もらった武器は火かき棒~

あきさけ

〈バディ・ウェポン・オンライン〉にようこそ

「おめでとうございます! あなたの初期武器はウルトラレア装備【火かき棒】に決定しました!」

「って、火かき棒!?」

「はい。とっても強いですよ!」


 私、常葉ときわ静流しずるはオンラインVRゲーム、〈バディ・ウェポン・オンライン〉を始めることになった。

 そして、最初の武器選択で選ばれたのは、なんと【火かき棒】だったのだ。

 どうしてこうなった!?


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「ふむふむ、ゲームスタート時に、最初の武器を選ぶのね」


 私はゲーム紹介サイトで〈バディ・ウェポン・オンライン〉の情報を集めていた。

 なんでそんなことをしているかというと、友達に一緒にやらないか、と誘われたためなんだよね。

 その友達も、最近〈バディ・ウェポン・オンライン〉を始めたみたいで、一緒にプレイしてくれる人を探していた……というか、私に狙いを絞って一点突破してきた。

 ……まあ、私の趣味がゲームなのは、広く知られいることですし、かまわないけど?

 というわけで、誘われるがまま、〈バディ・ウェポン・オンライン〉を始めることにしたのだ。

 で、とりあえず、ということで、情報サイトを読みあさっているわけ。


「とりあえず、ゲーム開始してからしばらくは初期武器しか使えないのね。これは慎重に選ばないと……」


 で、初期装備の紹介ページを開いて見るけど……なんていうかごっちゃごちゃだった。

 わかりやすい西洋風の剣もあれば刀もある、槍があれば薙刀がある、ほかにも、斧、鎌、銃、弓などなど……。

 数えたくないけど、百種類くらいはあるんじゃないの?

 っていうか、ここまで考えた人、絶対頭おかしいよね!?


「……いかん、初期武器をなににすればいいかわからなくなってきた」


 これだけ種類があると、やってられないよね。

 どうしよう?


「ええと、ランダムもあるのか……そして、ランダムだとレア装備が出ることもある!」


 レア装備!

 響きだけで心躍る!!

 これはランダム一択でしょ!!


「これで決まりだね! さて、それじゃあ、ゲームもダウンロード済みみたいだし、早速始めよう!」


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 最近ではよくある完全没入型VRゲーム。

 〈バディ・ウェポン・オンライン〉もそんなゲームだ。

 さて、まずはキャラメイク……だけど、これはパーソナルデータをそのまま流用しよ。

 で、顔をメイクの要領でチョイチョイといじれば……完成!

 ほかの部分はいじらなくても大丈夫だよね。


 次、種族選択。

 えーっと、種族によるステータス差はないのね。

 じゃあ、獣人とかいいんじゃない?

 色々あるみたいだけど、犬獣人にしておこう。

 で、髪とか尻尾は……赤色でいっか。

 グラデーションさせて、燃えてるみたいな感じに。

 うん、いい感じ、いい感じ。

 やっぱりゲームは派手じゃないと!


 次は……成長タイプ選択?

 初期ステータスは皆一緒だけど、成長タイプでステータスに差が出てくる……と。

 うーん、これはいま決めなくてもいいみたいだから、後回しかな。

 手に入った武器に従って決めよう。


 あとは初期装備の色とかだけど、あんまりこだわれないみたいだし、赤系で統一しておこう。


 それから忘れてた、名前入力。

 名前は……トキワ=サイレントでオッケーかな。

 ……よし、重複チェックも突破!


 最後はお待ちかねの武器選択!

 それで、ランダムを選びたいときは、まず最初にヘルプAIを呼び出すのね。

 それじゃあ、AIさん、カモーン!


「お呼びですかー」


 出てきたのは妖精みたいな小さい人型AI。

 この子がナビゲートしてくれるのかな?

 

「呼んだ呼んだ!」

「はーい、なんのご用でしょう?」

「武器選択で、ランダムをやりたいの。準備をよろしく!」

「わかりましたー。ルールの説明はします?」


 あれ、ルールなんてあるんだ。

 いちおう聞いておこうかな?


「じゃあ、説明ヨロ」

「はーい。ランダム選択は最大四回までチャレンジできます。一回で即決定じゃないですよー」

「おー、それは嬉しいね」

「ただし、結果を持ち越すことはできません。一回目が不満で二回目に挑む場合、一回目の武器は選べなくなりますよ」

「そっか。慎重に選ばないとね」

「その性質上、四回目に挑んだ場合、強制的にその時の武器になりますからねー」

「おっけー。説明はそれだけ?」

「そうですねー。あとは、当然ですけど、一度ランダム選択を始めたら、通常選択はできなくなりますから注意してくださいねー」

「りょうかい! じゃあ、早速一回目の抽選をよろしく!」

「わかりましたー。では……えいっ!!」


 AIはどこからともなくサイコロを取り出して、それを投げた。

 まさかサイコロの目で決まるの!?


 と思ったら、サイコロが光り始めて中から武器が出てきた。

 その武器は……。


「ロングソードですねー。剣カテゴリーでは標準的な武器のひとつですよー」

「だよねぇ。これのレア度は?」

「勿論、コモンなのですよー」


 ですよねぇ。

 ただのロングソードがあたりなわけないし。


「AIさん、二回目をよろしく」

「はーい、とーりゃ!」


 二回目のサイロ投擲。

 そして、サイコロから出てきた武器は……。


「おめでとうございますー。スーパーレア武器【ブラストM82狙撃銃】ですよー」


 出てきたのは、めっちゃごつい狙撃銃。

 ってうか、これ、伏せ撃ちしなくちゃダメな奴?


「スーパーレア武器だけあってとっても強いですよー。具体的には、最初のボスもヘッドショットで一発です!」

「へえ、そんなにすごいんだ。デメリットは?」

「重い。反動が大きい。撃つのにたくさんのMPを消費する。しっかり弱点部位を撃ち抜かないと、ドロップ品のランクが下がる」

「デメリットだらけじゃない」

「でもでも、最初に手に入る銃火器カテゴリーでは最強ですよー? これにしませんか?」


 へえ、これが最強なんだ。

 ……ああ、でも、先に始めている友達が、どんな武器を使っているのか聞いておけばよかった。

 こんな鈍亀スナイパーになるのが決まっている武器、相性がいい組み合わせじゃないと絶対詰まる。

 ……最強武器、非常に、非常に惜しいけどパスだね。


「AIさん、三度目へ」

「もったいないですねー。スーパーレア武器は1%しか出ないのに。まあ、ご要望とあれば次に行きますけどー。とうっ」


 三度目のサイコロ。

 そしてサイコロの中から出てきたのは、ちょっと豪華な中華風の剣。


「アンコモン武器の【青竜刀】ですねー。わずかですが、水属性の攻撃力もあるお手頃なしなですよー」


 なんだろう、AIの話が通販の売り込みみたいに聞こえる。

 でも、青竜刀か……悪くはないんだろうけど、ちょっと地味よね。

 もっとこう、周りがあっと驚くような武器、欲しいじゃない!


「AIさん、ラストお願いします」

「了解でーす。たぁ!」


 最後、四回目のサイコロ投擲。

 サイコロから武器が出現しようとしたとき、虹色の光が吹き荒れた!


「おお、これはウルトラレア予告ですよ! 運がいいですねー!」


 最後、四回目でウルトラレアとか!

 友達に会ったら、絶対自慢してやるんだから!


 目に余り優しくない光の奔流が収まったその時、光の玉の中から私の相棒となる武器が姿を見せた。


「おめでとうございますー。 ウルトラレア装備【火かき棒】、当選ですー!!」

「ちょっとまって、火かき棒なの!?」

「はい、火かき棒ですよ。とっても強い火かき棒です!」


 ……ともよ。

 私、ゲームが始まる前から終わったかも知れない。

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