第2話 目を覚まして
「……はっ! ヤバっ! 〆切すぎ、て……」
私は数瞬の微睡みから瞬時に覚醒し、少量の動悸に胸を圧迫される。
それもすぐに戸惑いに変わってしまい、阿呆のように眼前の空を見つめるだけになってしまった。
「どこココ……」
いつものように〆切に追われ、自宅の仕事部屋(=寝室)で一心不乱に描いていた筈なのに……。
そう考え、記憶を辿ってみる。
確か。そう。
久しぶりに有名どこのアプリゲームのキャラクター絵で、好みの女の子。
もうそれは張り切って10時間はぶっ通しで描き続けていたはずで、〆切までは5時間を切っていたんじゃなかったかな。
そんな中あと1時間もあれば完成しそうだと、『やってやったぜー! ふー⤴︎』と心から叫んでしまう程のやばいテンションになっていた気がする。
う〜ん。この辺から記憶が曖昧だなぁ。
とにかく、この辺りで気が緩んだのか途端に力が入らなくなって、ウトウトしてきちゃって……。
「は! 描き終わってない! 〆切!!」
頭の中の記憶をよく覗き込むために、閉じていた目をカッと見開いて、正面を向く。
窓は無い。
壁もない。
つまり室内じゃない。
一面緑の草原と快晴の空が広がっているだけだ。
あれ……?
「……ココどこ?」
ループした。
それから2度ほど同じ様に、思考をループさせてやっと〆切は諦める事を決意した。
「せめてあの子を完成させたかったな……」
未練はタラタラだけれども……。
とにかくは現状が意味わからなさすぎて、何がどうなって、こんな所にいるのか見当もつかないが、ここが自分の生きていた世界でないことだけは理解した。
なぜかって? 見たまんまだよ。
空も草原も非常にリアルだが、絵で描いた様な見た目をしているからだ。
まるでアニメやゲームの中に迷い込んでしまったように。
そんな風に感じるのであるから、超リアルなVRでデスなゲームでも始まったのかなーと、一瞬考えてしまったが、私のいた現代ではあり得ないだろうよ。
風の匂い、陽射しの温かさ、そんなものを再現できるほどの技術など無く、立体に見えるただの映像でしかないのが私の知る仮想現実だから。
まあ、可能性だけで言えばなんらかの方法があり、私が知らないだけで、超リアルなデスゲームが開催されているということが、否定もできないが、可能性はかなり低いだろうね。
んなの、ねーよ。
と私の本心は私の思考に呆れているようであるが。
ひとまずここが別の世界。ラノベ的異世界(ねーよ※本心)や、ゲーム世界の中(妄想乙※本心)などと言った可能性の方があり得るのではないかと(ねーから※本心)
……本心よ。ねーねー言うけど、本心はなんだと思うわけ?
(死後の世界?)
それこそねーよ。
だって、私はここに生きているんだから。
とにかくここから移動して見ないと何もわからないだろうと言うことだけを、わかった気になり適当な方向に歩き出すことにした。
草原と空しか見当たらないのだから、どの方向でも変わらないでしょ。と言うお気楽なのか、自暴自棄なのか自分でも判断のつかない思いで、草原を進むのだった。
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