失恋

僕は失恋をした。


その理由だけで死のうだなんて、周りから見れば可笑しな話なのだろう。


話せば周りから止められる。なら、話さない。


ただ、最期も1人なのは物寂しいというか。なんというか。


死ぬ瞬間くらい、誰かに見届けて欲しい。一人にしないで欲しい。


そう考えるのは、どうやら僕だけではないらしい。世間を賑わせている「見届け人」なんていう奇妙なバイトがその証明だ。


自殺する人を何も言わず、ただ、タダ、見届けるだけ。それが見届け人。


自決をする人間には不要の代物である金。それを使って一時の安心を買う。

見届け人は報酬として数万から数十万もの金銭を受けとる。


中には数百人の見届け人を雇う人もいるらしく。その光景は、さながらライブ会場であるという噂だ。


しかし、残念な事に一端の会社員である僕には大層な貯金はなく。

見届け人を1人雇うだけで、やっとだった。


それはそれで僕らしいかな。なんて、考えながら。


ただ、タダ、じっと僕を見つめる見届け人を見返した。


「見届け人さん。僕は今から死にます。さようなら。」


素朴な最後の言葉を言い終えた僕は、足元の椅子を元気いっぱいに蹴り倒した。

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