第286話 何が起きたんだ...?

「ローシュ!!」


 親父の声が聞こえてきます...。


(あれ...なんでだ...?)


 体の感覚が殆どありません。


「ローシュ!!!」


 親父が俺の顔を覗き込んでくるのが分かる。


(親父...?、俺どうなったんだ...?)


 自分がどうなったかさえ分からず、ただ呆然と虚空を眺める自分。


 ただ...、確かに分かるのは、自分の状態が今普通ではないという事...。


「お...おや...じ」


「喋るな!!」


 必死に俺の体に服を押し当て、止血している様に見えた時、自分の身に何が起きたのか理解しました。


 そう思うと、自分の体が動かないのも納得できてしまうのでした。


「もう...いい...だいじょうぶ...」


「いや駄目だ!、息子を死なせる訳には行かない!」


 涙目になりながら、俺の止血をする父親を見てふっと笑いました。


「あんたとは...、ちがつながってない...」


「そんな事は関係ない!!、今治してやる!」


 父さんが使える魔法はあらゆる武具を錬成するという規格外の能力だと俺も熟知していますが、その中に死にかけの人を復活させる程強力な物がない事くらい、俺にも分かっていました。


(いやいいんだ...、俺はあんたの息子であれた事を誇りに思う...)


 さっきからルクルの激しい攻撃を大量の盾で防いでいますが、親父と言えど治療に集中しながらいつまでも防げる物ではないでしょう。


 そう考えると、自分の命が早く尽きる事を願いました。


(俺が死んでも王国にそこまでの損益は無いが、親父が倒れたら国中が震撼し不安にさせてしまう...、だったら...)


 最後の力を振り絞り、たった一本の剣を自分のすぐ上に錬成しました。


「ローシュ...?」


 突然現れたボロボロの刃に親父は一瞬気をとられていましたが、これでいいのです。


「おやじ...、さよ..なら...」


「!!!、駄目だ!!ローシュ!!!」


 ザシュッ...。


 肉を裂く綺麗な音が鳴り響きました...。


 〜エルシーの泊まっている宿〜


「はぁ...、どうしようかな...」


 私は少し悩んでいました。


「今度の休み、一緒にどこか遊びに行かないか?」とローシュに言われていたからです。


「私...、あんまり男の子と遊んだ事無いんだよね...、どんな服を着ていけばいいんだろう...」


 自分のアイテム欄を見て私服を見てみましたが、基本的に旅用の服と踊る用の服しか持っていません。


「う〜ん...、流石にこんな服で行く訳には行かないし...、何か服買いに行こうかな...」


 そう思い、彼からもらった赤い羽根のネックレスを身につけ、私はデート用の服を買いに行くのでした。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る