第287話 義親の絆

「死なせ...無いぞ...」


「!!!」


 なんと、俺が自殺しようとしたのを親父が自分の手で阻止したのです!。


(親父...!)


 その行為を間近で見てしまった、俺の両目からは涙が溢れでていました。


 両手が使えなくなった剣士はゆっくりと起き上がり、今まで見せたこともない優しい笑顔を向けてきたのです。


「ローシュ...、お前と私は確かに血は繋がっていない、だがそれがどうしたというのだ?、お前と私は同じ修羅場を何度も潜り抜けてきた、それはもう普通の親子以上に...、改めて言おう、ローシュ...、お前が私の息子で幸せだったと...」


「お...や...じ...」


 もう声も掠れてきてちゃんと発音できませんが、この思いだけは絶対に伝えたい。


(俺も...、親父が親でよかっ...た)


 俺が事切れるその瞬間!。


 急に親父の体が光輝き、何やら呟いた。


「神法・女神の奇跡...」


 聞いたこともない呪文...。


 親父が魔法を扱えるなんて初めて知りましたが、この傷ではどんな魔法を扱ったとしても助からないでしょう...。


(最後の最後で親父に傷を負わせて退場だなんてな...、全く...俺の人生失敗ばかりだったな...)


 やり残した事がありすぎる。


 妹ともっと幸福な時間を過ごしたかった...。


 エルシーの事をもっと知りたかった...。


 母さんと父さんには親孝行をもっと沢山してあげたかった...。


 クティル王国の騎士として、国民を引退するまで守りたかった...。


 少し考えるだけでもこれだけのことが思い浮かぶ。


(嫌だな...死にたくないな...)


 そう思いながら目を瞑ろうとした時、異変に気がついた。


(体が軽い...?)


 なんとなくそう思い、ゆっくりと立ち上がってみると、やはり立ち上がれました。


(さっきまで致命傷だったはずなのになんで...)


 グッと拳を握ってみると、以前よりも力がみなぎります。


(どうなってるんだ!?、親父!)


「親父!」


 俺がそう叫ぶと、足元に転がる親父の姿が見えました。


「親父!?」


 そっと抱きかかえ、彼の顔色を伺いますが、状態は芳しくありませんでした。


 血の気が悪くなり、呼吸が乱れているのがわかります。


「どうしたんだよ!親父!」


 俺が聞い見ても彼はぐったりしたまま動きません。


「なんだ?、急に光ったと思ったら倒れ込みやがった...、死んだのか?


 その言葉を聞いた瞬間、血管がブチ切れる程の怒りに襲われました。


「親父が死ぬ訳ないだろ!!」


 俺が片手を上げて武器錬成を行うと、いつもより数倍速く形となり、完成度も著しく成長していて、奴の体に数本の剣が突き刺さりました。


「なっ!?」


 俺は自分でも驚く程の錬成速度に目を疑いました。


「行け...!ローシュ...!」


 力のない声で俺を鼓舞してくれる親父を見ながら、俺は立ち上がりました。


「行くぞ!!ルクル!」


 彼も俺を敵と認識したのか、こちらをしっかりと見据え叫んできます。


「こい!!ローシュ!」


 俺は数百本の剣を一瞬で錬成しながら、奴に向かうのでした。


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