第262話 合成獣(キメラ)①
「人間...!」
所々に緑色の体色を持つ彼女はそう言って走り出します。
「あっ!待って!」
私は思わずその背中を追いかけました。
こんな所に人間の子供のような子がいるなんて思っても見なかったので驚きます。
「待ってよ!」
結構早い彼女を追いかけるのはまあまあしんどい...。
(嘘でしょ...、風魔法で身体強化してても追い付けないなんて...)
明らかに歳相応の素早さではありませんので、こちらも本気を出すしか無いようです。
「また力借りるよ、エリサ...」
全身に電撃を張り巡らせ、筋肉系を刺激し一瞬のスピードを爆発的に跳ねあげてようやく追いつけました。
「追いついた!」
「人間の子供の癖に...なんて早さなの!?」
彼女の口の悪さに私はムッとしたので口を動かします。
「人間の子供の癖にって...、じゃああなたはなんなの?」
「私は...」
口ごもってしまう彼女。
「何か訳ありなの?」
「...」
私が聞いても何も言わない彼女を見ていると、何だか聞きにくくなってしまったので、別の事を聞いてみます。
「じゃあさ、名前!教えてよ!、私はカリン、あなたは?」
気さくに話しかけた方が良いかなと思いこのような行動に出て見ると、彼女は不安そうな表情を浮かべながらも答えてくれました。
「エレネア...」
「じゃあエレネアちゃんだね!、私と友達になってよ」
ニヒッと笑いながら手を差し伸べた瞬間!、轟音と共に巨大な何かが姿を現しました。
私はそいつの姿を見て震えてしまいます。
「なにあれ...」
言葉で表すのが異様な程、それは生物としての形を成していませんでした。
身長が3メートル程あり、背中から腕が6本生えており足は7本、極太の腕の先には鋭い爪が伸びていて並み居る敵を打ち倒してきたような強者感がありました。
ハッと意識を取り戻し、逃げるという選択肢を撮ります。
「エレネア!逃げるよ!」
私は彼女の手を取ってみると、以上に軽い事に違和感を覚えます。
(!?、思ったよりかなり軽い!?)
でも今はそんな事に気をとられている場合ではありません。
化け物は方向を上げ、どでかい魔法陣を作り上げました。
「!?、あいつ魔法を使うの?、だったら...」
奴の詠唱に合わせて別のスペルで割り込んでみます。
所々のスペルを弄り、調整した結果。
奴の魔法陣は決壊し、魔法を不発に終わらせれます。
「やった!、私って結構できるじゃん!」
そう言いながらも体は次の行動に移っていました。
やつが慌てている隙に彼女を草むらに隠してこう呟きます。
「ちょっとここに隠れてて」
「カリンは?」
不安そうな表情でそう呟く彼女。
「あんなやつくらい私がすぐにやっつけちゃうから大丈夫だよ、任せといて」
トンッと胸を叩いて心配ないよと彼女を勇気づける私。
私は彼女に微笑みかけながら化け物の前に立ちふさがりました。
怖いはずなのに...、不思議と負けるビジョンが見えてきません。
寧ろ口角が上がりニヤニヤしてしまってる自分がおかしいとさえ感じてしまいます。
(なんだろう...、私...恐怖で頭でもおかしくなちゃったかな?)
そう思える自分が何となく怖い。
目の前にそびえ立つ3メートルの巨体がまるで...、そうまるで大した障害にさえならないような気さするのです。
聖人の血がそうさせているのかは分かりませんが、とにかく直に感じられる真の意味での『恐怖』という感情が今の私には無いようにさえ思えました。
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