第242話 輪廻教『我欲の翼』
「たっだいま〜!」
「エリサ!どこに行ってたのですか!?」
「ごめんごめんミライ!、ちょっと面白い子を拾っちゃって」
そう言って彼女は私を前に突き出した。
「誰?この子...」
「剣聖の息子に振られて心が折れちゃった人だよ、それよりもこの子から発せられてるこの瘴気感じるでしょ?...、この子はきっと...」
それを聞いた時、ミライと呼ばれた女性はニヤリと笑ったような気がする。
「ああ...聖人に思いを踏みにじられた哀れな子羊よ...、我らが魔女様が貴女をお救いくださるでしょう...、祈りなさい...、心の奥底から...」
私の凍え切った手を握りしめてそう諭す彼女。
(魔女様...?)
思い返すだけで発作を起こしそうになる程の恐怖を王国全体に与えた張本人に祈れというのかこの女性は...。
そう思いながら、他に頼れる人も居なかった私は祈りました。
(悠久の魔女様...私にお救いを与えください...)
ただ祈る。
無意味だと分かっていても私は祈るしか無かった。
もう私がローシュと結ばれる事は一生かけても叶わぬ夢となっているのに、私の支配欲はずっと腹から出てきそうなほど煮えくり返っている。
(私から彼を奪う人は...誰?)
まだ私にはその人の名前も姿も知り得ない事なのですが、何故かその者に対する怒りのような負の感情がどんどん私の中で膨らんでいくのを感じる...!。
(憎い...、誰が?私からあの人を奪う人物が!)
それが再び私を立ち上がらせる動機となった。
そのドス黒い瘴気の様な物が渦巻き、私の中に何かが入ってくる様な感覚を得た。
「私は...彼を奪う者全てを許さない...!」
さっきまで死人の様な瞳をしていた私はもう居ません。
今ここに居るのは...!。
「輪廻教徒が1人...、支配欲のメルラ...」
それを聞いた紫髪の彼女は笑う。
「そうですか...、貴女は魔女様から“支配欲”の欲求を与えられたのですね...」
バッとローブを羽ばたかせ高らかに宣言する彼女。
「ようこそ我ら『我欲の翼』へ...、歓迎しますわ、支配欲のメルラさん...」
ああ...、何となく分かってしまいました...。
私は元より、光に属するものでは無かったという事に...。
彼の存在する場所にいた時にはずっと心が締め付けられるような痛みが走っていたのに対し、この場所の居心地が凄く良い様に感じられます。
魔女の福音を受けた私は今、生き返ったかのような活力を全身に宿しています。
「これからよろしくね、ミライにエリサ...」
ドス黒い笑みを浮かべる私に対し、彼女達はふふっと笑うだけでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます