第243話 輪廻教の料理事情

「朝ごはんできたよ〜」


「わ〜い!」


 一番に食卓へと飛び出してくるのはいつもエリサです。


「メルラが来てから毎日ご飯が楽しみだよ〜!」


 凄く嬉しそうな彼女を見ていると、私も幸せになってしまいそうな気持ちになります。


「ちょっと待ってね、ミライさんとゴウさんがもう少しで朝の儀式を終わらせてくるから」


「え〜...、せっかくメルラが作ってくれたサンドイッチが冷えちゃうよ〜...」


 きっと彼女はカリカリっとしたベーコンを所望なのでしょう...。

 確かにベーコンは焼きたての方が美味しく食べられると言うのには同意しますね。


「この匂いは...、焼きたてのベーコンかしら?」


 噂をすれば2人が魔人様のいる部屋から降りて来ました。


「ほう...、やはりメルラの料理はとても見た目がいいな」


 その発言をしたゴウさんに2人の痛い視線が突き刺さります。


「「悪かったわね!」」


「あはは...、まあ2人共、落ち着いて食べましょう」


 私は苦笑いをしながら2人を席に案内します。


「「「「頂きます」」」」


 私たちは一斉に食事を開始しました。

 本日の朝食はベーコン入りマスタードサンドイッチと、豆のスープです。

 自分で作ったサンドイッチを食べてみると、我ながらいい出来だと思えました。

 カリカリのベーコンに程よい酸味のマスタードがよく合い、シャキシャキとした生の野菜がベーコンの脂っぽさを取り除いて見事に調和しています。


「「美味しい!」」


「美味い!」


 3人目ともが同じような意見を述べた時、不覚にもちょっと笑ってしまいました。


「あはっ、3人ともありがとうございます」


 照れ臭そうにする3人を見ていると、なんだか和んでしまいますね。

 ここが本当に輪廻教の本拠地だとは思えないほどに平和な感じがしてなりません。

 私の作った料理を食べて笑顔になる人がいる...。

 その事実は嬉しいと思います。


「メルラの料理ってなんでも美味しいよね!、私苦手な野菜一杯あったけど、メルラが調理すると結構食べられるようになったんだよ!」


 彼女の言っていることは間違いではありません。

 エリサさんは確かに好き嫌いが多い子でした。

 ですが、それはあくまでも調理の仕方による苦手がほとんどだったのです。

 言い方は悪いですけど、ここにいる人たちは皆料理が得意とは言えず、試しにほかの人たちの調理方法を見てみると、びっくりしてしまいました。

 焼く以外の方法を知らないのか!と言いたくなるほど生のままで焼く。

 たったこれだけなのです。

 そりゃ美味しくなる物もありますけど...、調味料さえ使わないその潔さには笑いが溢れてしまいました。


(本当に私が来なかったら食生活絶望的だったんだな...輪廻教...)


 私が来てからはそんなこともなく、ちゃんとした料理を毎日提供しています。

 その結果もあってか、みんな肌に艶が見え始め、魔力などの精神面も向上したように見えますね。


(やっぱり食事って大切なんだな...)


 改めて食事の凄さを見に染みて体験した私なのでした。





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