第240話 似合ってる

「これつけてみていい?」


 どことなくネックレスを着けるのを躊躇っているように見えます。


「ああいいぜ、てか...もうエルシーの物だしな」


 もう俺の手を離れたので彼女の物だというのに、着用するのに一言お礼を言う彼女は可愛いと思う。

 少し恥ずかしそうにしながら、俺の前でネックレスを着ける彼女。

 それをつけた彼女の感想は...。


「うん!軽いし動きの邪魔にならない!、それに...」


 ちょっと外に出て確認しいる彼女。

 数秒経ってからこちらを見てニカッと笑いました。


「あんま寒くない感じがする!」


 あれだけ喜んでくれているのであれば、俺も渡した甲斐があると言うものです。


「似合ってるぞエルシー」


 俺の言葉に対し、少しだけ顔を赤らめる彼女。


「べ...、別に褒められたからって何も出ないわよ!」


 慌てている彼女の姿も可愛らしいと思い、微笑む俺。


「別にいいさ、俺は君の笑っている姿が一番好きなんだから...」


「えっ...と、それ告白のつもり...?」


 そう聞かれた時、辺りに気まずい緊張感が走る。

 どう答えて良いか分からなくなってしまう。


(何故だ...、妹には普通に好きだと言うことを伝えれるのに、彼女には伝えづらい感じがする...)


 お互いに何も言えない時間が過ぎていくのは居心地が悪い...。

 店の中は賑わっている声が聞こえるのに、俺たちのいるこの空間だけが切り離されているようである。


(今がチャンスだ...、言えっ!言うんだ俺ぇぇ!!)


「...あのっ!」


「ちょっとまって!」


 俺が勇気を出した瞬間に彼女が声を被せてきた。


「なんだ?」


「今からローシュが言おうとしてること、大体予想ができる...、できるからこそこれだけは言わせて欲しい...」


 しっかりと力強い視線でこちらを見据える彼女...。

 胸に手を置いて呟き始めた。


「私は冒険者です...、いつ命を落とすかわかりません」


 何処かで聞いたことのある言葉だ...。


「わかってる...」


「私は踊り子です、色んな人達に目で楽しんでもらい、自分を売るのが商売の一つです」


「それもわかってる」


 これも問題ない、彼女のその仕事こそが美しいと感じたのだから...。


「私はある人のお姉ちゃんです、妹が成人するまではこの町に留まり続け稼がなくてはなりません、それでも良いですか?」


「構わない、エルシーの妹なら俺も面倒を見るよ...」


「最後に...、本当に私で良いんですね?」


 真剣な表情でそう呟く彼女だったが、俺の決意が揺らぐことは無い。


「ああ、俺は君が良いんだエルシー...」


 さっきまでの異様な恥ずかしさはいつのまにか無くなっていた。

 俺は心の奥底から彼女を愛しているからである。

 雪が降り積もる中、俺と彼女は結ばれたのだった...。


 〜ある年初めの一日〜




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