第212話 最終日の朝

「結局先生はテラスで寝たのか...」


 私は一応先生を起こしに来たのですが、テラスに放置されたこの人を起こすのは正直怖いですね...。


「先生...、プラム先生起きてください!」


「...くちゅん...」


(...なんか可愛い...)


 起こしても起きなかったので思わず鼻の辺りをさわさわしてみると嫌がって腕を振ってくるのも可愛い。

 頬っぺたをにぎにぎしてみるとむっちゃ不機嫌そうな顔をしてくるのも可愛い。

 可愛い、かわいい、カワイイ、KAWAiiですね!。

 私が変に興奮しながら彼女の柔らかい肌を触っていると、不意にガシッと私の腕に何かが絡みついてくるような感覚がしたので確認します

 すると、そこには目をパッチリと開いた彼女がいました。

 それでも私は平然を装いこう呟きます。


「先生、おはようございます」


「な〜にしてるのかしら?、カ〜リン?」


 その言葉には確かな重みを感じられ、思わず目線をそらしてしまいました。

 どうやら酔いはもう冷めたようで、いつもの彼女がそこにいます。

 辺りを伺いながら何となく何があったのか察したのでしょう。

 彼女は私にこう呟きました。


「先生怒ってないから、妹の場所を教えて」


「えっと...、そこの廊下をまっすぐ歩いた先の部屋です」


 私は母さんが待つ部屋に彼女を案内しました。


「エ〜ル〜カ〜!!」


 彼女がドアノブを勢いよく開くと、そこには礼装を施された母さんの姿があったので、私と先生はぽか〜んと口を開けていました。

 いつも見る明るい母さんの姿は面影もなく、まさしくこの人こそこの王国を導く者“賢聖エルカ”だと言わんばかりの神々しさをひしひしと感じる私。

 でも、そう思ったのは一瞬だけで、次の瞬間には先生は母さんに噛み付いていました。


「エルカ!!、あなた私を外にほっぽり出したまま帰ったでしょ!!」


「姉さん...、ごめんなさい、あまりにも気持ちよさそうに寝てると思って起こすのが可哀想になったのよ、でも大丈夫!防寒対策は魔法で完璧にしておいたから!」


 親指をぐっと突き出し、いいねをつける母さんだったが...。


「そう言う問題じゃないわよ!!」


 先生は激怒して言いました。


「普通外に姉を置いて行く〜?」


「ごめんちゃい」


 母さんが物凄くふざけているようにしか見えない態度で先生に謝るがこれは逆効果だろう。

 プルプルと小刻みに震えだす先生。

 私が見た感じでも火山の噴火一歩手前と言ったところである。


(今のうちに逃げよう...)


 私が部屋からこそ〜と抜け出した瞬間に、先生怒りの言葉が次々に上がってくるのが聴こえてきましたが、今日もクティル王国は平和ですね。

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