第211話 お城の晩御飯

 以前パーティで見たことのある料理もちらほら見えますが、見たこともない料理もいくつかありました。

 異世界の食事はいつも私を楽しませてくれます。

 例えばこの魚料理、お魚だと思って食べてみると...。


(お肉みたいな弾力と香ばしさ...、とっても美味しい!)


「う〜ん♡」


 私が頰に手を当てながらその美味しさを表現していると、急に頭の上にいるアアルがよだれを垂らし始めました。


「カリン!!僕にも頂戴!!」


 いつもより羽を振る速度が速いのは、この料理を早く食べて見たいという欲求からきているのでしょう。


「はいはい、ちゃんとアアルにもあげるから」


「やった〜!!」


 魚に食らいつくアアルを見ていると、まるで美味しいものを始めて食べる子供のようでクスッと笑えます。


「慌てなくても沢山あるからゆっくり食べようよ」


「こんなの美味しい物を逃す手はないよ!...、僕に手はないからこの場合は羽...か?」


 どうでもいい事に頭を悩ませているアアル。

 私がそうこうしているうちにパニラが口を挟んできました。


「カリンちゃん!一緒に食べよ!」


 肩をくっつけてくるのでちょっと恥ずかしいですが、これが彼女なりの愛情表現なのでしょう。

 どちらにせよ、好意を向けられるのは嬉しい...。


「うん!良いよ!」


「やった〜!!、じゃあまずはこれから」


 彼女のオススメする料理はどれも私の舌を唸らせる出来でとても美味しかった。

 私の満足そうな表情を見るたびに笑顔を見せてくる彼女は本当に幸福そうである。

 それはいいとして...。


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」


「あはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!」


(...、この二人飲み過ぎ!!、てかプラム先生酒癖悪っ!!)


 拳聖と先生が飲み比べしているのだが、時間が経つごとにどんどん酔いが回ってきたのかずっと笑い続けている。

 というか、見た目が幼女なだけに絵図らがまずいような気がするのは私だけだろうか?。

 何となく目線を合わせないようにしていたのだが...。


「カ〜リン〜...♡、ワイン追加してきて〜」


「先生...飲み過ぎ!!」


 私は差し出されたワイングラスを彼女から取り上げる。


「もう飲んだらダメ!」


 先生はグラスを取り返そうと手を伸ばしてくるのだが、足がおぼつかない彼女はグラグラっと態勢を崩し椅子から滑り落ちた。


「あひぃん!」


 変な声を出しながら倒れてもテーブルの下から私の方へカサカサと近寄ってくるのが不気味だ。


「カ〜リン〜、早くグラスを返しなさい〜」


「絶対に返してあげない!」


 私はとっさに椅子から飛び降りて彼女を踏みつけ逃げる。


「はっはっは!、チビスケ踏まれてやんのww」


 レインさんが踏まれた先生のマヌケな表情を見て笑うと、彼女の逆鱗に触れたのか突然空気が凍えました。


「レ〜イン〜、私の事をま〜たチビスケって言ったわね〜...、ヒック!」


 酔いが覚めないまま魔法の詠唱を始める先生。


「氷付けにしてあげる!!」


 シャレにならないほどの魔力量を先生から感じる。


「先生!!流石にそれは!」


 酔ってるとは言え彼女の魔法をこんな場所でぶっ放されたら私達まで危ないのだが、レインさんは挑発してしまっているのです。


「おお〜、こいこい〜」


 指をクイッと動かした瞬間、先生がバタンと倒れました。


(えっ...?)


 突然の事で何が起きたのかわかりません。

 ただ突然先生が倒れたように見えました。


「なっさけね〜w、酔いでぶっ倒れやがったw」


 彼がそう言うのであればそうなのでしょうけど、何か腑に落ちない。

 彼が指を動かした瞬間に先生が倒れたのに偶然性があるとは思えないのだ。


(何かしらの魔法?、いやでもその時に魔力を全く感じなかった...)


 どうやって先生を気絶させたのかは謎ですが、取り敢えず危機は去ったと思いましょう。


「あらら、姉さんったら、こんな所で寝ちゃうと風邪引いちゃうわ」


 そう言って羽毛のベッドをこの場に出します。


「お休みなさい、姉さん」


 母さんは先生の頬っぺたにキスをして布団を覆い被せてあげました。

 この光景自体は微笑ましい物を感じますが、いかんせんテラスで寝かせるのかとツッコミを入れてしまいたくなる私でした。

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