第145話 王道展開

「私は今までずっとお城の中で過ごしてきました、町に降りた事もほとんどありません」


 私は何も言わずに彼女の愚痴を聞いてあげることにしました。

 本音を言える相手は本当に大事だと思います。

 私も前世では親に愚痴を聞いていて貰ったことを覚えているので、ここは大人しく彼女の不満を聞くのでした。


「カリンちゃんは考えたことある?、姫さまって貴方が思ってるよりも退屈極まり無い物なのよ、お国の為に姫としての流儀を教えられ、半ば強制的にその為の勉強、そして結婚相手までもう決められて...、そこに私の意思は一切考慮されていないの、だから、せめて1日くらい貴方とこの祭りを楽しみたいのよ...」


(ありがとうございます!王道展開本当に美味しいですわ!)


 ありきたりすぎる内容をベラベラ喋ってくれる彼女を見て、思わずニヤニヤしてしまいそうになる自分の内心。

 勿論表情は真剣なまま崩さないのだが、今にも吹き出しそうなほど可笑しい。

 私の世界では、こう言った姫様の内心など今さら説明不要であるほどにありふれているのだよと言いたい。

 まあそれが分かってるとは言え、私には彼女と一日遊んであげるくらいのことしかできないのも事実。

 私は不意に笑顔を彼女に向けて手を握った。

 びっくりしたような表情をする彼女は可愛らしいが、今は彼女に満足してもらう事を優先する。

 それがきっとこの状況を終わらせる早道だろう。

 この気が気でない状況を続けるのは、正直本当に疲れるのだ。


「パニラ、私が今日一日中しっかり遊んであげる、だから精一杯楽しみましょう!」


 そう言い終わると、彼女は満面の笑みを浮かべてくれていた。


「ありがとう!カリン!、じゃあ次はあそこに行きましょ!!」


 そう言って私の手を繋いだまま引っ張る彼女。

 本当はちょっと休憩したいが、彼女にとっては一生で一回の出来事なのかもしれないので、ここは私が我慢する。

 だって彼女には今日しかないのだから、お金を温存するなんて言う考えは最初っから無いのだろう。

 私は笑顔を振りまきながらも、財布の中身が後いくら残っているか考えていました。


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