第119話 仕事

「ったく...、何で私が下級モンスターの相手なんかしなくちゃ行けないんだ...」


 ブツブツ文句を垂れ流しながら郊外に住みつく魔物を蹴散らしていく。

 この辺りの魔物なんて誰でも倒せるだろうに...、ギルマスの考えることはわからない。

 ため息を吐きながら目的の坑道に向かう私。

 なんでも強力な魔物が住み着いただとかで私が派遣されたのである。

 強力な魔物と銘打ってあるが、所詮クティル王国周辺に住む魔物の力なたかが知れている。

 私は鼻で笑いながら目的の場所へと足を踏み入れた。


 〜旧坑道〜


 古くなった坑道は足場が悪く視界もそこまで良く無い。

 ゴツゴツとした岩肌がむき出しておりかなり危ない地形をしているのだが、冒険者にとっては慣れた物である。


(まあ、危ないって言ってもこんなもんよね〜...、もっと危険な地域を旅してきた私が言うのも何だけど、もうちょっと危なくても問題ないかな)


 毒の沼や溶岩の海、霧の立ち込める森など数多くの難所を走破してきた私にとっては、この程度の難易度はeasyすぎる。

 ただ足場が悪いだけなので、風の魔法を使い浮かんでいればそもそもデメリットが何も無いのである。

 聞かされていた通り足場は非常に悪いのだが、私にとっては取るに足らない問題だったと言うわけだ。


「これなら速攻で依頼を達成できるかもね」


 調子に乗って坑道内を探索していると、不意に魔物の視線を感じて振り返ったのだが何もいない。

 気のせいかなと思って前を見るとその視線の出所に気がついた!。

 上だったのだ!、坑道内に入ってからずっと私は上から観察されていたことに今感づき回避行動をとる。

 上から巨体が私を押しつぶそうとしてきたので、風力を全開にする緊急回避を取らされた。

 すごい勢いで岩肌がむき出しになっている壁に突撃したので、体への負担は大きかったのだが、あの巨体に潰されていれば確実に死んでいたかと思うと安い経費なのだった。

 ゴホッゴホッとむせながら咳を込み、標的の方を向いた。

 中々にデカいそいつの正体は体長5メートルはあろうかという百足だった。

 わしゃわしゃと動く無数の足がすごく気持ち悪いが、先手必勝とばかりに風の刃をぶち当てる。

 だが、風は奴に当たると四散してしまい、大した威力は出なかった。


「なんだあいつ...、野生の魔物の癖してアンチマジックでも覚えてんのか?」


 一度距離を取りながら自分の魔力を空中に散布していき自分のフィールドを作り出す。

 フィールドと呼ばれるこの魔法は、自分の魔力を空中に撒き散らす事により魔法の発動時間を短縮する効果があるのだ。


(さ〜てと、ここからが正念場だね...)


 一度深く深呼吸をした私は、目を見開き相手をその瞳に捉え続けていた。

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