第118話 クティル王国のギルドマスター
「こちらへどうぞ」
私は受付嬢に連れられ、関係者以外立ち入り禁止の場所へと誘われた。
そこには客人用のソファらしき物が対面していて、まさしく面接場兼ギルドマスター用の部屋といった感じだ。
分かりやすく言えば小学校の校長室みたいな物だと言える。
「失礼します!」
部屋の外から元気にハキハキと声を出す。
こういうのには慣れっこな私は好印象を相手に与える術をいくつか持っている。
まず挨拶は元気よく自分から言うこと、その次に自分の特技を相手に伝えること、最後に実際にそれが出来るかを見せることだ。
これらができればどのギルドでも大抵の場合雇ってくれる。
少なくとも私がギルドに登録できなかったことは一度もない。
私が部屋に入った瞬間、ギルドマスターらしき白髪の少年が私の方を見てあぐらをかいていた。
「おお〜、よくきてくれた〜、君の噂は聞いていたけれど実際の踊りはそれにも勝る素晴らしい物があったよエルシー君」
「...それは嬉しいですね」
どこのギルドもだいたい頭がおかしい人が頂点に君臨しているのだが、こんな年端もいかない少年がギルマスをしているギルドなんてここくらいだろう。
他の大陸のギルドにはいなかったので、少し困惑してしまったが動揺を顔には出さない。
私はこれでも一流の冒険者だと自負している為、このくらいの意外性でいちいち取り乱す訳にはいかない。
「ところで...、このギルドで踊り子として雇っていただける件ですが...、報酬の方はいかほどですか?」
いきなりここ話題を振るのは失礼かもしれないが、私はプロだ。
最低限度の報酬を貰わなければやる気が出ない。
彼は数秒考えたのちに指を5の形にした。
舐められたものだ...、一ヶ月5万ゴールドで私を雇おうと言うので呆れた。
「5万ゴールドですか...、少し考えさせてください」
なしなしなーし、たったの5万で働く気なんてさらさらない、これならば効率よく依頼をこなした方がボロ儲けできると思い部屋を出ようとしたその時。
「誰が5万だと言った?、50万だそう」
「マスター!!」
受付嬢の声がひっくり返った。
私も慌てて振り向いた。
一ヶ月50万もの収入が得られるのであればここで働くのも悪くない。
私はニコニコと彼の前に歩いて行き「交渉成立ですね」と言った。
「ただし!、我々からの依頼は絶対に受けて貰うし、期待しただけの成果が上がらなければ支払額を考えさせて貰うからな!!」
そう言われたのでむしろやる気が出てくる。
「大丈夫です!、私を誰だと思ってるんですか?、寧ろ価値を跳ねあげて見せます!」
不敵な笑みを彼に見せると、彼は笑みを返してきた。
「お互いにいい商売ができるといいな」
「ええ」
この人の下で働くのであれば退屈はしなさそうだなと思う私だった。
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