第116話 妹

 私は彼女が出てくるのを持ってたので、もう夕暮れ時になってしまっていた。


「もうこんな時間か...、そろそろ子供達が学校から出て来るな...」


 目当ての生徒が出てくるまで私は待つ。

 今日の朝見かけた緑髪の少女がようやく現れたので声をかけてみる。


「ねぇ、貴方はここの学校の生徒?」


「うん、そうだけどお姉さんは?」


「私か?、私は冒険者でたまたまこの国に来ただけさ...」


「へぇ〜、冒険者なんだ、って事は色んな国とか見て来たの?」


「まあな、私も長年この仕事についていて久しぶりにここに戻ってきたんだ」


「お姉さんは元々ここに住んでいた人なの?」


「うん?、そうだよ...、貴方くらいの年齢の時に姉さんはここに住んでいたのさ」


 私は徐に今日買った果実を彼女に渡す。


「食べるかい?、結構美味しいぞ」


「知らない人から物を貰っちゃいけないからごめんね」


 そう言われ果実を返されたので仕方なく袋内にもどした。

 私の顔を見ながら彼女は不思議そうな顔をして来た。


「姉さんとはどっかであった気がするけど...ごめんね思い出せないや」


「!...、そうかい、あんたとは気が合いそうだね」


 私は可笑しくなって少し笑う。


「もう行かなきゃ、シスターが心配するから」


 先を急ごうとする彼女を引き止め、私は質問した。


「最後にひとつだけいいかな、貴方の名前は?」


「私?私はヤヨイだよ、お姉さんは?」


「私かい?、私はエルシーさ、覚えといてくれよ」


「うん、わかった!それじゃあエルシー姉さんさようなら!」


「さようなら...」


 元気に片手を振りながら去っていく彼女を私は寂しそうに見送った。

 不意に瞳から一筋の涙が溢れてきたことの気がついた私はそれを手の甲で拭った。

 ヤヨイか...、あの子と同じ名前だ...生きていてくれたんだ...。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る