第109話 それぞれの休日・リタ
「ふんふんふ〜ん♪」
私は家で人形を編んでいました。
この趣味は生まれた時に天から与えられた才能だとも思えます。
他の事は苦手なのに、これだけは得意なのでそう思えてならないのでした。
「できた...」
針を縫い終わり、出来上がったクマの人形の完成度に満足します。
「うん!、よく出来てる!」
そう言いながら彼を机の上に置こうとすると。
「リタ...」
「!?」
人形の方から声がしたのでクマを見てみると、片手を上げて私の方を見ていました。
「えっ...、人形が喋ってる...!?」
「そうだよ、僕が喋ってるんだ」
そう言いながら私の膝にポンっと座りました。
「リタのスキルが一定値に達したから、僕に心が生まれ動き出したんだよ」
私は思わず声を上げて喜びました。
人形さんとお話しするという夢が実現したのでいてもたってもいられなくなり、彼の体を抱き上げて部屋中を走り回りました。
「リタ?、もう遅いから早く寝なさい!」
下からお母さんの声が聞こえてきたので「はーい!」と答え、もう一度人形を見る。
生き物のように佇む彼は、まるで小さい子供のようにも思えた。
「そういえば貴方の名前はなんて言うの?」
「僕の名前?、それはカリンがつけるべきだよ、いわば僕は人形に宿った精霊、ならば呼び出した君に命名の権利があると思わないかい?」
そう言われたので頭を悩ませます。
他人の名前を考えたことなどなかったのでよーく考えたその結果、一つの名前が浮かんできたのでこれにすることにしました。
「貴方の名前はクミ、クマさんの姿だからそれに近い名前の方が良いかなって思ったから...」
彼は気に入ってくれるだろうか?、少し怖かったが彼はポンっと手を叩いて笑った。
「クミか...、うん良い名前だね、僕はクミ、君が呼び出した人形の精クミだ!」
幸いにも受け入れてくれたので助かった。
もしも気に入ってくれなかったらどうしようと思っていたので、内心ヒヤヒヤしていたのだ。
もう少し話していたいが、母さんにうるさく言われるのも嫌なので今日はもう眠る。
「クミ、お休みなさい」
「お休みリタ...、また明日」
彼はそれだけ言うと瞳を閉じた。
そんな機能はつけていないはずなのに目を閉じるという行為ができると言うことは、やはり人形に精霊が宿ったと考えて間違い無いだろう。
(カリンちゃん、わたしにも精霊の友達ができたよ...!)
明日学校で皆にクミを見せたらどんな顔をするだろうか、そればっかり気になってしまい夜中の間ずっとワクワクしていた。
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