第105話 喫茶店クルージュ

「喫茶店に行きましょ!」


 母さんの突飛的な提案によって、私達は今喫茶店「クルージュ」に来ていました。


「この店、たま〜に前を通っていたけど喫茶店だったのか...」


 中の様子をしっかりと見たことがなかったので、初めて知った。


「まっ、なんでも良いけど早く行こーぜ、腹減ったしな」


「それには私も同意見だ、そろそろ昼になるし人が少ないうちに入る方が合理的だな」


 兄さんと父さんもなぜかついてきている。

 暇だったのか家族との時間を大事にしたいのかはよく分からないが、きっと後者であると信じたい。

 私たちが店に入ると、まだ昼が来る前だったので人も少なくて安心する。


「いらっしゃいませ〜、4名様ですか?」


「そうそう、4名よ〜」


 女性店員に明るく返す母さんだが、やっぱりその見た目でその言葉を選ぶのはなかなか勇気があると言える。

 事実、私は精神年齢中3だが、あのような言葉を前世でいう勇気はない。

 今の姿であればギリギリ言えるか否かであろう。

 実際に店員さんも少し顔が引きつっているのがよく分かる。

 きっとあの人は母さんの事を「ああ、この人はバカなんだろうな」とか思っている事だろう。


「4名様ご案内しまーす」


 店内に店員の声が響きながら私たちを案内したところで違和感に気がつく。

 あれ?喫茶店ってこんな感じだっけ?。

 まあ、ここは異世界だし、多少言葉の意味が違っててもおかしくはないか...。

 私達が席に座ると、店員さんがメニューを広げてくれた。


「本日はホットケーキがオススメとなっております!」


「あっ、俺は牛味噌ステーキで!」


「私も同じ物を頼もう」


「もう!2人とも!せっかくの喫茶店なのよ!」


「でも、俺は腹減ってるしな〜、ここはステーキだは」


 母さんと兄さんが互いに譲れないようで言い合っているのを見ると和む。

 家族っていいなぁと思いながら私はホットケーキを頼むと、母さんが私の手を取って喜んでくれた。


「カリンちゃんはわかってくれたのね!、そう!ここは喫茶店なのよ、軽い食事と紅茶やコーヒーを嗜んで帰る、これこそが醍醐味よね!」


 何やら母さんが一人で盛り上がっているが、単純にお腹があまり空いてないのと、オススメされたのを頼んだだけである。

 少しイメージしていた喫茶店とは違うが、私からすればただ食事の場だと思えば良いだけの事だと割り切る。

 店員さんがメニューを再確認すると厨房の方に向かって行く。

 その間も母さんと兄さんがお互いの意見をまだ言い合っていたので流石に止めろよとは思う。

 周りの客があまりいないのでまだいいが、喫茶店に家族連れでこんなに騒がれては溜まったものではないだろう。

 私ははあっとため息を吐きながら、料理が運ばれて来る時間を水を飲みながら過ごした。

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