第86話 弟子
「カリンの兄さん、俺は貴方みたく強くなりたいんだ、どうすればそこまで強くなれる?」
俺はその質問の返答に困ってしまう。
俺が強いのは父さんとの遠征による経験の蓄積が大きいと思うからだ。
多少の訓練ではこれを凌駕することは絶対にできないと断言できる。
訓練よりも実戦の積み重ねの方が何倍も経験値になることを俺は知っているからだ。
だがそんな事を話して勝手に町の外にでも行かれたら面倒だと思い適当に流そうとする。
「そりゃあやっぱり毎日の積み重ねだな、お前も武器錬成の魔法を使うんだろ?その魔法は使用頻度次第でどんどん強くなれる代物なんだよ、世間的には価値のない無能な魔法なんて言われてるけど俺はその逆だと思う」
「逆?」
俺は不思議そうな顔をする彼に自分の考えを示す。
「ありふれた魔法武器錬成、俺もその魔法の使い手だがお前は俺を強いと思っただろ?」
彼は縦に首を振る。
「それを見て価値が無いだなんて思ったか?」
すぐさま彼から返答が帰ってくる。
「思わなかった...、だからここで貴方に教えてもらおうと思って来ている訳で...」
「そう、どんな魔法も使い手次第なんだ、それに気がついているお前はきっといつか強くなれる」
それっぽいことを言って帰って貰おうとするが、彼はまだ納得していないようだ。
「でもそれじゃあ貴方が強い理由になってない、教えてくれ貴方が強くなった理由を」
俺はやれやれと思いながらも彼の目を見た。
済んだ黒い瞳が俺をじっと見つめている。
数秒考えたが、彼は適当な事を言って帰ってくれそうにない。
「わかった剣を教えてやる、だが生半可な気持ちだと分かれば直ぐに縁を切るからそのつもりでいいか?」
最近の子なんか根性ないだろうからちょっときつめに言って黙ってもらおう。
そう思っていた時期が俺にもありました。
「わかったそれでいい、俺に剣を教えてくれ」
「...?、えっマジでやるのお前...」
「はい、俺には守るべき大切な人がいるんです、その為には最低限貴方クラスの力は欲しいと思っています」
う〜ん...面倒な事になったぞ...、こんな奴に時間を取られてたまるか!適当に雑用やらせたらすぐに諦めるだろ、最近の子なんてそんなもんだ。
「じゃあまずはこの家の掃除からやって貰おうか」
「わかちました、そういえば貴方の名前は?」
「俺はローシュだ」
「わかりましたローシュさん、今日からよろしくお願いします」
なんだこいつ...歳の割に妙に礼儀正しいじゃねぇか...。
妙な違和感を感じつつも今日から俺に弟子ができた。
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