なぜか異世界に幼女で転生してしまった私は、優秀な親の子供だったのですが！！

第60話 ランニング

「カリンちゃんも一緒に走る？」

　この一言を聞いてしまった為、私は校庭をヤヨイちゃんと一緒に走っている。

　もう10週はしただろうか？、私の肉体はもう走る事を拒もうとしてほぼ歩きの状態になる。

「はは、カリンちゃん、もうバテたの？」

　彼女に笑われるが、どう考えても異常なのはお前だよと言いたい。

　明らかに私より早いペースで走っている彼女は、少しも苦しそうにせず、爽やか笑顔のまま私の先を走っている。

　すでに周回遅れになってはいるが、別にレースではないので問題ない。

　元はというと、風魔法の特訓のつもりで付き合ったはずなのだが、なぜかランニングをやることになったのである。

「ぎ...ギブアップ...」

　私の足が悲鳴を上げ始めたので、ギブアップした。

「もう、カリンちゃんたら、遠慮しなくていいのに〜」

(遠慮なんてしてないから！！)

　ぜ〜ぜ〜と息を乱しながら呼吸を整えようと深呼吸をする。

　その様子を見た彼女は不思議そうな顔をしている。

「本当につらそうだね...、もしかしてカリンちゃん忘れちゃってる？」

「何を？」

　私はなんのことか何も思いつかないので答えを聞いてみる。

「いや、魔法の仕方だよ、風の魔法で肺を強化して長時間走れる様にする方法」

「どういうこと？」

　ちょっと息が落ち着いてきたので、額の汗を手でぬぐいながら顔を彼女の方に向ける。

　彼女は頭を掻きながらも説明してくれた。

「えっと...これカリンちゃんから教えて貰ったんだけど言うね、風魔法の強化にはとにかく走って風と一体化する感覚を掴むのが一番なんだけど、その為には長時間走らないといけないんだよね」

　くるっと一回その場で回って私の方を向き、指で私の胸を指す。

「そこでカリンちゃんの発案が役に立ったの、それは、肺の負担を風の魔法で軽減し長時間走れる様にできないかってね」

「肺の負担を風の魔法で軽減？」

　言ってる意味は何となくわかるが、やり方がさっぱりわからない、てかこんなこと思いつくなんてさすがカリン、発想のしかたが賢聖の娘だけあると思える。

　う〜んと頭に手を置いて私を見る彼女を見るに、やはり言葉で言うのは難しいのだろう。

「とりあえず見てて、きっと見ればカリンちゃんならすぐできるから」

　私はじっと彼女のやり方を見ているが、正直なところ魔力の動きがよくわからない。

　だけど...、彼女の呼吸の仕方が変わったのには気がついた。

(こうかな？)

　見よう見まねでやり方を真似する。

　風の魔法で効率よく肺を動かすイメージ。

　フーと静かに息を吐く。

　空気に風の魔法を練り込み、素早くいらない空気との交換を済ませる。

(これ...、走りながらやると考えるとかなりしんどいな...)

　ただこの作業をやるだけでも辛いのに、この一連の魔法コントロールをやりつつ走る...？、できるか！。

　今の私にここまで精密なコントロールはできない、目の前の少女はこの作業を走りながら平然とやっていたという事実に驚いた。

「ヤヨイちゃん...、すごいね！こんなことをずっとやっていたなんて...」

「え？でもカリンちゃんが先にできるようになってたよね？、でその後で私ができるようになったと思うんだけど...」

(それはこっちの世界のカリン！！、私はあっちの世界の林華！！)

　と心の中で叫ぶが、今目の前の友人に説明しても混乱するだけなのは明白なので言わない。

「う〜ん...もうちょっとだけ頑張ってみる...」

　なんとなくできないのは悔しいので、とりあえず頑張って見ることにする。

「大丈夫、カリンちゃんならすぐにできるようになるよ！、私も教えてあげられることは全て教えるから一緒にがんばろ！」

　私の手を取って笑顔を向けてくれる彼女の為に早くやり方を覚えよう。

　私はこの魔法の会得をする為に、しばらくの間は彼女と走る事を日課にすることにした。