　フレイとトウマがこちらに近づいてくる。

「お疲れ様！」

　私はいつしか、二人の情熱のような物に憧れていた。

　私自身、この二人の様に何かにうち込んだ事はない。

　トウマとフレイの決闘を見ていると、胸の内側が熱くなっていた。

　私はプラス思考で言ったつもりなのだが、トウマは嫌そうな顔をしている事に気がついので、負けた事を気にしているのだろうと思い励ます様に声をかける。

「トウマ君凄かったよ！、あんなに素早く動けるなんて！、私なんか、フレイ君の後ろについたことすら気がつかなかったんだから本当に凄いよ！」

　子供の使いそうな言葉を選び褒めるのだが、彼はどこか浮かない顔をしている。

「でも負けは負けだ...、あーあ、いつかフレイに勝てる日はくんのかな〜」

　遠くにある星でもみる様に天を仰いだ彼はため息を吐いた。

　そんな彼の様子を見たフレイが笑いながら彼の良いところを指摘する。

「確かに、今回は僕が勝ったけど、トウマは確実に強くなっているよ...、僕も君に負けないよう、一層精進する事にしよう」

「だったら俺はそれにいつか追いついて追い抜いてやる！！、だから！そこで待ってろよ！フレイ！！」

　急に声を大きく出して叫ぶ彼を、私たちは顔を見合わせた後笑った。

　彼も数秒遅れたが笑う。

　ふとフレイが学校の時計を見て呟いた。

「おっともうこんな時間だ...、僕はもう行くねトウマ、カリンちゃん...また後で...」

「お...おう！また今度な！」

　トウマが挨拶を返したので私も返す。

「う...ん...？」

(また後で...？、明日のことかな？)

　なんだかわからない言葉を残されたが、今日の二人の決闘を私が忘れる事はないだろう。

　ファンタジー世界の子供の決闘レベルが高いことも分かったのは大きい収穫だと思う。

　...、いつのまにか黄昏に染まった学校を眺めながら、トウマが私に呟いた。

「カリン...、今日は負けちまったけど...いつの日か俺が強くなってフレイに勝つまで待っていてくれよな！」

　彼の待っていてという意味は分からないが「待ってるよ...トウマ君！」と静かに呟いた。

　それを聞いたトウマは居ても立っても居られない様な素振りを見せた後、駆け出して行った。

　一人残された私は、胸に手を置いて一連の流れを思い出しながら帰路に着いた。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい