第23話 リタ

「ねえ、カリンちゃんは覚えてる?、私があなたに助けてもらった時のこと...」


 学校の帰り道で、急にそんな話をされても分かるわけがない。

 私は日本で住む餅月林華であり、この世界に存在していたカリンではないのだから。


「え...、あはは...、ごめん覚えてない...」


 私は申し訳なさそうに彼女に謝ると、彼女は「いいよ」と呟いた。


「たとえカリンちゃんが忘れたとしても、私は絶対に忘れないからなね...」


 なんのことかは分からないが、とりあえず私はこの子に嫌われているわけではなさそうだ。

 雰囲気や私に向けてくる仕草が、中の良い友人の様な感じだから悪い子ではないと分かる。

 ちらちらと私を見てるなと思っていると、彼女は徐にアイテム欄を開いた。

 何だろうと思いながら、その行為を見ていると。


「はいっ、またお人形を作って見たんだ、受け取ってくれるよね?」


 彼女はアイテム欄からウサギのぬいぐるみを出して、私に渡してきたのだ。

 ...、この時察した。

 私の部屋に妙に多く存在していたぬいぐるみの正体を。


(この子が定期的にカリンに人形を渡していたのか...、てかそう考えるとクオリティ高いな...、普通に市販品だと勘違いするレベルなんだけど...)


 私は素直に受け取る、流石に友人の好意を無下にすることは性分的にできなかった。


「ありがとう!、大事にするね!」


 そのうち捨てようとか思っていたが、こういうことであれば捨てるわけにはいかない。

 私が人形を大事にすると言うと、彼女は満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう、やっぱりカリンちゃんは記憶をなくしてもカリンちゃんだね!」


 なんだかおかしくなった私たちは笑いあった。

 この子も悪い子ではないなと思いながら、私達は一緒の帰り道を進んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る