第22話 放課後

 夕焼けが世界を照らす時間に、私はもう一度挑戦する。

 昼休みにある程度の要領を掴んだので、今度こそ出来そうだ。

 今度はハッキリと羽のイメージをする。

 アアルの羽を実際に触りながらイメージを深くする。

 これは私だけかもしれないが、実物を触っている方が、より鮮明に意識できるのだ。

 背中に魔力を集中させ、羽を生成する。

 か細く、弱々しい羽だが、私にとってこれは偉大なる一歩だ!

 真剣にやっているので、かなり疲れるが、空を飛ぶ為ならばこれくらいの苦難は乗り越えてみせる。


(行ける!!)


 そう思った瞬間に私は飛翔する。

 僅かに浮いた感じがする、空中に浮くというのはなかなか難しく、マシュマロの塊の上を走っている様な感じがする。

 頑張って安定させようとしていると「カリンちゃん一緒に帰ろ...」と黒髪地味子のリタが話しかけきたので、私は「どう!?浮いてる?浮いてるよね!?」と聞いてみる。

 彼女はどう受け答えしていいか分からないような顔をしている。


「えっと...、浮いている様には見えないかな...」


 そう言われたのでびっくりした。

 自分では浮いている様に感じているのだが、彼女の視点では浮いていないのだろうか?

 私の背中から生えている、小さい羽がピコピコと動いているのが見えたのか。


「あっ...、小さくて可愛い羽だねカリンちゃん...」


 と言いながら私の背中に触ってきた。

 不意に魔力羽を触られたので消滅し、私は地に落ちた。

 ...?、落ちたはずなのに僅かな衝撃しか来ないので不振に思い、もう一度彼女に聞いてみる。


「ねえ...、リタ...ちゃんだったよね?、さっき私浮いてた?」


 リタは首を横に振った後にオドオドしながら私に答える。


「えっと...、カリンちゃんは浮いてなかったと思う...、本当は浮いていたのかもしれないけど...、私の目にはそう映らなかったかな...」


(どういうこと...?、私は確かに浮いている気がしていた...、彼女の反応を見るに、羽も生成できてたみたいだし...)


 それに浮いている様な感覚も実感として残っている。

 疑問が残りすぎてなんかスッキリしない...。

 とりあえず今日はもう帰ろうかな、母さんが心配するといけないし...。

 不完全燃焼感はあるが、空を飛ぶという感覚だけでも得れたのは進歩だと思える。

 家に帰ったらもう一度練習してみようと思い、彼女と一緒に帰って行った。

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