第11話 小鳥の名前

「緊張するな...」


 学校から帰ってきて、家の玄関の前で立ち止まってしまった。

 理由は小鳥を飼ってもいいかの相談だ。

 今小鳥は、私の頭の上で眠っている。

 バランス感覚がいいのか、私が走っても落ちてこない。

 私の頭の上が巣見たいで、なんか面白い。

 ふふっと笑いが溢れると「カリンちゃん帰っていたの?」と背後から声が聞こえた。

 聞き覚えのある声なので、すぐに正体がわかった。


「母さん!」


 私は振り返り、その姿を確認する。

 母さんは買い物袋を手に持っていた。

 おそらくだが、今晩のオカズを買いに行っていたのだろう。


「そんな所に立ってないで、お家にお入り」


 母さんにそう言われたので、家に入る素振りを見せながら頭にいる者の存在感を出す。


「あら...?その子は?」


 母さんが小鳥に気がついたので話を持ちかける。


「実は...、今日の授業で召喚しちゃって...、この子うちで飼えないかな?」


 母さんが動物が好きか嫌いかによるが、頼むだけ頼んでみる。

 できれば飼ってあげたいのだ、勝手に呼び出したのは他でもない自分なのだから...。

 目を瞑って、息を吐き判決を待つ。


「いいわよ!、カリンちゃんが自分から生き物を飼ってみたいと思うのなら、母さんは大歓迎よ!」


「...、そうだよね...、やっぱり飼っちゃいけない...?、えっ...いいの?」


 思ったより好感触な反応に、私はどういう反応をしていいのか困るが、今は小鳥を飼っていいことになったことを喜ぼう。


「それで...その子の名前はなんていうの?」


 私は気づかされた、この子の名前がまだないことに。

 数秒考えてから名前を決めた。


「この子の名前はアアル」


 私が名前をつけた瞬間に、アアルが目覚め、翼を2回ほど羽ばたかせた。

 それはまるで、名付けられたことがわかったかのようだった。


「そう!、いい名前ね!カリンちゃんが名付け親になったんだから、ちゃんとお世話するのよ」


 母さんには受けているみたいでホッと一安心した。

 心なしかアアルも喜んでいるような声を上げている。


「クピピピィ〜」


「あら可愛い...」


 母さんがアアルを手に乗せようとすると、アアルはスッと母さんの方に飛び乗った。

 小鳥の本能なのか、私の親にもよく懐いているようだ。

 親の親なら、大丈夫とでも言いたいような気がした。

 とりあえずの難関は突破したので、これから先の生活が少し楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る