ヒロインに辞表ってありますか?

Reina*

記憶の帰還

私が記憶を取り戻したのはよわい10歳の時。

エスティアール王国ヴァスタ公爵家の令嬢、アリシア・ヴァスタとして今日まで生きてきた。

10歳の生誕祭の日にアイシアではない記憶が流れてくるなんて知りもせずに・・・。

生前の私は兎に角面倒ごとが嫌いだった。

勉強・運動・人付き合い・おしゃれ・考えることの全てが面倒に思えて避けて通ろうとのらりくらりと生きていた。

学生時代もなんとなく過ごして社会人になっても任された仕事だけを淡々とこなして行くだけだった。

特別なことなんて何も必要なくて一人でいる方が楽でいい。

そんな性格だったからか友人も然程さほど居なく、趣味と呼べるようなものもなくつまらない人間だった。

そう、だった・・・のだ。

今の私、アリシア・ヴァスタはものぐさとは程遠く何事にも興味を持ち探究心にかられやすい子だ。

故に周りの大人たちを困らせる事など日常茶飯事。

そんな少女がものぐさだった前世の記憶を取り戻すとどうなるのか・・・・。


「あー・・・まじか」


天蓋ベットに腰をかけながらポツリと呟いただけだった。

心底どうでもいいからだ。

前世の記憶を持っていたからと言って得なことなんてあるわけないし、何かが変わることもない。

何故なら私はヴァスタ公爵家令嬢アリシア・ヴァスタでしかないのだから。

流れてくる記憶に対して少しわざとらしく溜息を吐いて、いつもと変わらずに侍女を呼んだ。


「リーファ、お茶を持ってきて」


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