ウソップ物語
針井伽羅藩
第1話 金のオノ 銀のオノ
ある日、木こりでバイクに乗る上野森従堂が、いつものように仕事にやって来た。
簡単な作りの山小屋の道具入れ兼休憩場所のドアは、開くと鳴るチャリン。サビついチェインズ。
まあそれは仕方ないとしても、この山小屋には最低限必要なラジオと、ダルマストーブとビールがあれば家にカイエンヌよ。家に帰ればいいんだけど、1人の気楽さもあるけど、時々はミズリーな気持ちにもなるわな。
ラジオからは、「PS I love you」が流れて来た。
斧を持ち出し木を切って薪にしよう森に出た。小屋の近くはマギーめいし、だから遠くに行くしかないのよ。小屋からテクテク歩いテグアボニー?バイクがあるじゃんねえ。
木こりの生活は、アンナ木を切ったり、こんな木を切ったりして、ジャンクさい仕事なのよ。1人でやる仕事だから、誰かにヘルプは求められないし。
その木立の近くに沼があり、一仕事終えたら休憩するには持って来いだった。
そろそろここでいいと決め、バイクから降りる。オノを取り出し、目星をつけた木に向かって振り下ろす。
「カーン」
木の枝に止まっていたブラックバードが、ウェイと下に羽ばたきながら空に向かって飛んで行った。手に衝撃が、ピッキーンズと走った。
オノを2投目、3投目と振り下ろしている時だった。
「あっ!」手が滑り、オノがすり抜け沼に落ちた。
「ドボン!」
「あっちゃあ!」
やっちまったただ。
すると、たちまち沼に霧が沸き始め、ロン毛をセンター分けにし、細いヘアバンドをした丸メガネをかけた白装束のヨーロッパ系の男性が現れこう言った。
「ヘイ、従堂!」
「何故、名前を知っているのか?」と思わずビビッりながら訊ねた。
「オフコース!おまえはオノを沼に落としたのか?」
「イエス」
「おまえはオノを沼に落としたんか?」
「イエスィゥたでー」
「おまえの落としたのは、金のオノか、銀のオノか?」
「えっ、私が落としたのは金のオノです」
上野はとんでもない嘘をついた。
「ならば、これだな?」
鷲掴みにして沼なら引き上げだのは、金髪の老婆だった。
何処かで見た顔だったが、思い出せない。
「だ、誰ですか?」
上野が、思わず訊ねた。
「金のオノだ」
「金髪のオノヨーコじゃん!」
元ビートルズメンバーのジョンレノンの奥さんだった。
「はい。じゃあ銀のオノいる?」
「それって、ただの白髪の年相応のオノヨーコじゃねの?」
「はい」
「こんな汚い沼で待ってても人が来ないし、ましてオノを放り投げ込む人間もおらん。50年ぶりじゃ。常時張り込み損」
「じゃあ、あなたは誰?」
「ここでずうっと、リンゴ剃ったージュース飲んでぽうと待っかとったにー」
「あんた、ジョンレノン?なの?」
終
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