ジャイ子とスパイダーマンの恋
ふじゆう
プロローグ
「おーい、ジャイ子! 俺にもお茶入れて」
「もう、ジャイ子って呼ぶなあ!」
旦那は、ソファで娘と戯れながら、甘えた声を出した。最近では旦那の真似をして娘が、私を『ジャイ子』と呼ぶから、困ったものだ。私は椅子から立ち上がり、キッチンへと向かう。お茶を三つと、二人の子供には、リンゴジュースを入れてあげよう。噛り付くように、テレビに夢中になっている息子に声をかけるが、返事がない。自分の世界に没頭しているようだ。
グラスを乗せたお盆をリビングテーブルに置く。
「飲みたいんだったら、こっちで飲んでよね」
私が、声をかけると、旦那と娘は後で飲むとのことであった。それなら、何故お茶を入れさせたのだ。
私は溜め息をつきながらも自然と笑みが零れた。久し振りに友人と出会って、昔話に花が咲いたからだろう。当時の良い思い出も、悪い思い出も、今となっては笑って話せる。だから、きっと全部、良い思い出なのだ。あれも、これも、それも、今の穏やかな生活を送る為の伏線だったと思えるから、あれも、これも、それも、どれもなくてはならない出来事だったのだ。
―――『ジャイ子』という、あだ名でさえも、今では愛おしく感じるのだ。
スタートは、どこだったのだろう? そうだ、小学生の頃だ。だいぶ遡るなと、今更ながら時の流れの速さに驚いた。旦那と遊んでいる娘が、もう五歳になる。
不思議なものだと、娘を眺めていたら、自然と涙が零れてきた。私は悟られないように、そっとティッシュに手を伸ばして、鼻をかむ振りをして涙を拭った。
全ての始まりは、小学校の五年生の時だ―――
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