私のおばあちゃんはね…

由句

第1話 おばあちゃんの家は山の上

母方の祖母の話です。

もちろん、祖父も大好きでしたが やはりおばあちゃんっ子でした。


おばあちゃんは山、川、海、畑……すべてに囲まれたとある田舎の町に住んでいました。

小さい頃、父の転勤で離れた所に住んでいたので新幹線で年に2回程帰ります。


おばあちゃんの家に行く時はドキドキワクワクで楽しみしかなかったです。

おばあちゃんの家は畑に囲まれた細い道をとおって…その先にある山の1番上にあります。

人1人が歩けるほどの細いアスファルトのみちがおばあちゃんの家に続いています。


小さい子にはちょっと息が切れるほどの登り坂でした。おばあちゃんの家に向かうのに、最大の難関がありました。


それはちょうど真ん中辺りに差し掛かったところに途中家があるのですが、その家が番犬に気の荒い犬を飼ってるんです。

しかも門の所に繋いでいるので、細い道の半分くらいの所まで飛びかかってきて、大きな声で吠えまくります。


あぁぁぁ怖い……怖い。。怖いっ!!


いつもビクビクしながら道の隅っこをつま先で歩き、足早に通り過ぎます。

いつか犬を繋いでいるヒモが切れる気がして本当に怖いんです。


そこさえ突破すればあとはおばあちゃんの家のみ!


横に視線を向けると段々畑が広がり、その周りを竹林が囲んでいます。

更に歩いてきた道を振り返ると 町が見渡せていい景色が広がっていました。

胸がスーーっとします。


いよいよおばあちゃんの家です。

少し階段があり、階段を上がると少し先に玄関があります。


玄関まで3メートルほどありましたが両側に「すもも」の大きな木が生えていて木陰ができています。

すももの時期には甘酸っぱい匂いが漂い、山から色んな鳥が食べにきていました。

虫もいっぱいきていました。


おばあちゃんは 放ったらかしにするので、熟れたすももがたくさん下に落ちていて、いい匂いと腐った匂いとが混ざりあった微妙な匂いがプンプンしていました。


玄関を開け、「来たよー!!」と、声をかけてあがります。


おばあちゃんの家にはいつも鍵がかかっていません。

引き戸の玄関。

トイレはボットン便所。

そして奥には板の間の台所。

その横に8畳の部屋が2つ、襖の仕切りはありますがいつも開けっ放しなのでけっこうな広さです。


おばあちゃんは、その和室の窓際にある小さな四角い机の所でいつも 正座して趣味のビーズで編むがま口財布を作っていました。

おばあちゃんを見つけ、背中に向かって……


「おばあちゃーん!」

と呼びかけると


「来たか~」

と、関西弁でやさしく返事をしてくれたものです。。


庭の池には金魚がいました。

私たちが夏休み、縁日で取ってくる金魚たちでした。。

エサをやって縁側に座って、日向ぼっこ。


時々振り返ると、ひたすら編み針で財布を編んでるおばあちゃん。。

目が合って、にっこり……。


特になんでもない ごくごく普通のありきたりの時間。


そして少しアルプスの少女ハイジな気分。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る