〔ハムスターの迷宮物語〕(二)

野良のハムスターは迷宮の中を彷徨っていた


野良のハムスターは

迷宮の中の坂道を下ったり

上ったりした


もう迷宮に案内人はいない


案内人は死んだあいつだったんだ


野良のハムスターは

迷宮の中の坂道を下ったり

上ったりした


迷宮の中の坂道の、どこかで

ドングリが転がる音が聞こえた


迷宮の中のどこかで、ドングリが転がる音が聞こえた


そうだ、迷宮の入り口にはドングリのなる木が植えてあったんだ


野良のハムスターは転がるようにして

迷宮の中の坂道を下ったり、上ったりした


ドングリが転がる音が聞こえる方へ向かって

下ったり、上ったりした


もう迷宮に案内人はいない


そうだ、俺は

ドングリが転がる音が聞こえる方へ向かって

転がり続けるんだ


俺は転がり続けるんだ

俺は転がり続けるんだ


俺は転がり続ける

もう迷宮の中で迷ったりはしない

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