第1話

目を覚ますと僕は白い世界に居た。

そこは本当に真っ白世界だった。

そこで、僕は椅子に座らされていた。

「目を覚ましましたか?」

そう語り掛けてきたのは綺麗な女性だった。

真っ白い肌に銀の髪。目だけは真っ赤に染まっていたがそれはまるで宝石みたいにキラキラしていた。

「あの・・・貴方は?」

「私はメビィア。ブリストアという世界で神様のようなことをしている者です。」

「神様・・・。」

僕は首を傾げる。正直、冗談を言われているとしか思えなかった。

そんな様子に気を悪くすることなくメビィアさんは微笑む。

「まあ、信じられないのも無理ありませんね・・・。でも、事実なので受け入れてくれないと話が進みません。」

「はあ・・・。」

僕は生返事をする。

「実はこの世界は魔王による侵略の危機に瀕しています。」

「魔王?」

RPGとかで聞く名前に僕は首を傾げる。

「はい、詳しい話は省きます。どうせこの世界の出来事は忘れてしまいますからね・・・。」

「そうなんですか?」

「詳しい話は目が覚めてから・・・。それよりもあなたには本当に申し訳ないことをしてしまいました。」

そう言ってメビィアさんは僕に頭を下げる。

僕は突然のことに戸惑ってしまった。

「あの・・・どういうことでしょうか?」

「実は、貴方以外の6人だけを呼んだつもりだったのです。ですが、貴方たち兄妹の絆が思った以上に強かったみたいで貴方もこの世界に引っ張られてしまいました。」

「僕以外というと、正悟兄さん達ですか?」

「その通りです。」

メビィアさんが頷く。

「さらに残念なことに、あなたでは私の世界に行っても生き残ることが不可能でしょう。何の力も持たない貴方では・・・。」

「・・・待ってよ。それじゃあ、他の兄妹・・・正悟兄さん達には力があるみたいじゃないですか?」

「はい。彼らの強い魂により私の世界に来た瞬間にそれぞれ自分の能力に目覚めます。」

「そうなんですね・・・。」

僕はそれしか言葉が出なかった。

「貴方をこの世界に呼んでしまったのは私のミスです。そんな貴方には特別に私から力を授けましょう。」

「力を?」

「はい。貴方はどんな力を望みますか?」

僕はしばらく考える。

望んだ力とは一体どの程度のモノなのか・・・?

「あの、その力というのはどの程度のモノなのでしょうか?例えばチートみたいな能力をもらえるのでしょうか?」

「いえ。貴方の魂ではそんな力を授けても魂が耐えきれなくて壊れてしまいます。精々貴方の兄妹の1割程度の力しか持ち合わせることは出来ません。」

メビィアさんは答える。

「それってどれくらいの力ですか?」

「そうですね・・・。この図を見てもらえると分かりやすいかもしれません。」

そう言って何もない空間からボードが出現する。

そこには何やら日本語で文字が書かれていた。

「貴方の知識でも理解できるように翻略させていただきました。レベルで表すと・・・。」

そう言ってメビィアさんは説明を始める。


まず、この世界の身分について説明された。

この世界での身分


奴隷 

魔法を封じられたただの労働力。


平民 

戦う力を持たない農民などを指す。


鍛冶師・商人

戦う力は持たないが特殊な技術や知識を持つ。


衛兵・下級魔導師・メイド・執事

初級の戦闘魔法が使用可能。衛兵や下級魔導師・メイド・執事は下級貴族以上でないとなることが出来ない。


騎士・魔導士

中級の戦闘魔法が使用可能。中流階級の貴族が多い。


近衛騎士・宮廷魔導師

上級の戦闘魔法が使用可能。王家の血筋を受け継ぐ家が多いが稀に下級以上からこの地位に上り詰める者もいる。


将軍・賢者

王家の分家の中で最も血の濃いものがなる。


王家

現王家の代表とその家族。


勇者

異世界から召喚された6人。強大な魔力と戦闘力を持つ。


「これを数値で表すとこんな感じになります。」



奴隷         レベル0(測定不能)

平民         レベル1~5程度

鍛冶師・商人    レベル6~9程度

メイド・執事    レベル10程度

衛兵・下級魔導師  レベル11~15程度

騎士・魔導士    レベル16~20程度

近衛兵・宮廷魔導師 レベル21~30程度

将軍・賢者     レベル31~40程度

王家        レベル30程度

勇者        レベル70程度

※わかりやすくレベルで表してみました。


「そして、貴方の強さの位置はココです。」

そう言って示されたのは「騎士と魔導士」、「近衛兵・宮廷魔導師」の間の位置だった。

「・・・微妙ですね。」

「加護を与えたとしてもこれが限度です。それ以上の力を与えれば貴方の魂は崩壊してしまうでしょう・・・。」

「・・・そんなに僕の魂って弱いんですか?」

「はい。」

即答された。

僕は心の中で少し落ち込みながらも考える。

「あの・・・。もし、加護を与えられなければどの程度なのですか?」

「そうですね・・・。ここら辺ではないでしょうか?」

そう言って示されたのは「平民」の項目だった。

「本当に弱いんですね・・・。」

「力の総量は生まれた時の魂で決まってしまいますからね・・・。こればかりはどうしようもありません。」

「つまり、どんなに鍛えても無駄ということですか?」

「そうですね。」

また即答される。

つまり、ある程度の力の加護を得なければどうしようもないということだ。

「あの、加護はどの程度付けられますか?」

「あまり強大な加護でなければ貴方の魂が持つ限り付与できます。」

「そうですか・・・。」

僕は考える。

まずは、平民から騎士レベルの戦闘能力は必須だ。

次に必要となるのはそれを補う力・・・。

そうなると、何があるか・・・。

「あの、例えば動物と話が出来るとかそう言うのは可能ですか?」

「可能です。」

「まずは、様々な生き物と意思疎通ができる能力が欲しいです。」

「なるほど・・・他には?」

「あとは、平民から騎士レベルの戦闘能力に上げて欲しいです。」

「わかりました・・・。他には何を望みますか?」

「他ですか・・・?」

僕は少し考える。

しかし、特に思い浮かばなかった。

「う~ん・・・。特にないですかね。」

「無いのですか?」

メビィアさんは驚いたように僕を見る。

「はい。後は、自分で何とかしてみようと思います。」

「本当に良いのですね?」

念押しするように聞いてきたので僕は少し考えた。

「・・・では、武器を用意してくれます?」

「武器ですね?」

メビィアさんは安堵したような顔をする。

「はい。兄さん達の武器を用意してくれませんか?」

「貴方の兄妹達にですか?」

「はい。何か特別な武器とかそんな感じのモノを・・・。」

「わかりました・・・貴方の願い確かに受け取りました。」

そして、メビィアさんは僕に近づく。

「・・・これは、チャンスかもしれませんね。」

「えっ?」

すると、僕の視界がゆがむ。

「もう時間みたいですね・・・。もうすぐ、貴方は私の世界で目を覚まします。」

「そうですか・・・。」

「はい。起きたらここでの記憶は無くなります。」

そして、メビィアは僕の頬を撫でる。

「貴方の兄妹に過酷な運命が待っています。でも、貴方というイレギュラーが居ればそれを覆すことが出来るかもしれません。」

そう言ってメビィアさんは微笑む。

「あとのことは頼みましたよ、ショウマ・・・。」

そのメビィアさんの髪は銀から白に変わる。

そこで、僕の意識は途切れたのだった。

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