僕はどうやら神様の手違いにより飛ばされたみたいです・・・。

わっしー

プロローグ

僕の家族は男3人と女4人の7人兄妹だ。

両親はいない。

長男の真田正悟は、大企業で働く25歳。部長を務めるエリートだ。

長女の真田美香は、人気アイドルユニット「MISYURA」のセンターを務めている。

双子の姉妹で二女の真田美沙は今、有名大学で研究所の研究員を務めている。

三女の真田美紀は美沙姉さんとは違い高校を卒業後すぐに働きに出ている。

しかし、天性の才能によって高卒ながらも営業成績はトップクラスとのことだ。

二人共21歳だ。

次男の真田正文は高校3年生で剣道部の主将。

剣道での戦績は、数々の大会で優勝をする。

100年に一人の天才と言われ、多くのメディアに取り上げられている。

四女の真田美玖は中学1年生。

文武両道で様々な分野で活躍している才女だ。

そして、僕はこの真田家では三男で真田正真。高校1年生だ。

特に人に誇れるものもない凡人だ。

運動も勉強も平均的。

得意分野は家事全般だろうか?

僕達兄妹は両親が居ないこともあって他の家に比べると仲が良い。

いつも助け合って生きていた。


「正悟兄さん!早くしないと遅刻するよ!今日は大事な会議なんでしょ!?」

僕は朝食の盛り付けをしながら階段に向かって叫ぶ。

すると、ドタドタと忙しい足音が聞こえてくる。

「スマン・・・。」

そう言いながら正悟兄さんはネクタイを締めていた。

そして、自分の席に着く。

「おはよう、正真!」

声が聞こえたと思ったら後ろから柔らかい感触を感じた。

「暑苦しい!今、朝食の盛り付けしているんだから抱き着かないでよ!」

「あん!」

僕が振り払うとそこにはノースリーブにショートパンツ姿の美香姉さんが居た。

ファンからしたらアイドルの下着同然の姿には興奮を覚えるだろうが、実の姉にそんな感情は一切湧かない。

「もう!正真ったらノリが悪いんだから・・・。昔はあんなに可愛かったのに・・・。」

「いつの話をしているんだか・・・。」

美香姉さんは少しスキンシップが激しい。

他の兄妹にはそんなにベタベタすることはないのに不思議だ。

そう思いながらも盛り付けの続きをしていると・・・。

「やべ!寝過ごした!!」

そう言ってパジャマ姿のまま階段からドタドタと降りてきたのは正文兄さんだった。

「正文兄さん!また、夜更かししていたんだろ!?みんなが寝ているときにはテレビの音は小さくしてくれっていつも言っているよね?」

そう言うと正文兄さんはバツが悪そうな顔をする。

「ワリィ!どうしても確認したい動きがあって、その様子が記録されていた試合を観ていたんだ。」

「それなら、お昼の内に観ればいいでしょ?昨日はお昼過ぎまで寝ていたよね?」

そう言うのは妹の美玖だった。

「うっ・・・だって久しぶりの休みだったしよぉ・・・。」

「久しぶりの休みなら正真兄さんの手伝いをしたらどうなの?正真兄さんはいつもみんなのために家のことをしてくれているんだから・・・。」

「わ・・・わりぃ・・・。」

美玖の言葉に正文兄さんはたじたじだ。

「まあまあ、学生時代はそんなもんでしょ?大目に見ようよ。」

そう言うのは双子の妹、美紀姉さんだった。

「美沙、あまり正文を甘やかしてはダメ。」

しかし、そんな美紀姉さんを美沙姉さんが窘める。

「ほら、朝食も出来たから座って!」

僕はそう言って兄妹全員に声を掛ける。

いつもの朝食の風景だった。


「今日は帰りが遅くなる。」

正悟兄さんが朝食中に話す。

「仕事が忙しいの?」

美玖が聞くと兄さんが頷く。

しかし、その表情は暗かった。

「ああ・・・。実は社長から見合いの話が来ていてな・・・。」

兄さんはため息を吐きながら言う。

「見合い!?」

「誰と!?」

兄さんの言葉に美紀姉さんと美沙姉さんが机を乗り出す。

その様子に兄さんはたじろぎながらも答える。

「社長の娘・・・。どうしたものかと悩んでいるんだ・・・。」

「うん?玉の輿じゃねぇか。何を迷う必要があるんだ?」

「まさか、相当ブサイクとか性格が悪いとか?」

正文兄さんと美香姉さんが同時に聞く。

「写真は?私、興味があるな・・・。」

美玖も興味を示しているようで正悟兄さんに聞くと兄さんはスマフォを操作する。

「彼女がそうなのだが・・・。」

写真の女性は清楚そうな黒髪美女だった。

品があり大和撫子を絵にかいたような人物だった。

「すげぇ美人じゃん!?胸も大きいし!!」

「そうね・・・今すぐにでも私のグループにスカウトしちゃいたいぐらい!」

正文兄さんと美香姉さんはその写真の女性に好意的だ。

しかし、美紀姉さんと美沙姉さんはというと眉を顰める。

「そう?なんだか腹に何か抱えてそうな感じがするわよ?」

「そうね。一見無害そうな女ほどとんでもない奴ってことが多いモノよ。」

そんな二人の様子を見ていた美玖が一言。

「・・・嫉妬?」

『ちがうわよ!!』

二人は顔を赤らめて叫ぶ。

「正悟兄さんはなんでそんなに悩んでいるの?」

美玖はそんな二人をほっといて聞く。

「まあ、もしも結婚ってことになったらこの家から出ることになると思うんだ。そうなった時にお前たちのことは心配でな・・・。」

「そんなこと気にしなくていいのに・・・。」

美玖がそう言うが正悟兄さんは渋い顔をする。

「まあ、まずは会ってから決めればいいと思うよ?」

「正真?」

僕は正悟兄さんを見る。

「正悟兄さんは心配し過ぎ。僕達だってもう子供じゃないんだから・・・。正悟兄さんも自分の幸せを考えるべきだよ。」

「正真の言う通り!私もいるんだから!」

そう言って美香姉さんが胸を張る。

「いや、美香姉さんは頼りにならないし・・・。」

「酷い!?」

落ち込む姉さんを他所に僕は兄さんに語り掛ける。

「兄さんは今まで、僕達のために頑張ってくれた。父さんと母さんが交通事故で亡くなった時、僕達のために頑張ってくれたんだ。なら、僕たちが正悟兄さんの為に頑張る番だよね?」

「正真・・・。」

「まあ、そうよね・・・。家のことなら私たちもいるんだから安心してよ。」

「美紀は頼りにならないけど、まあ私がいるんだから大丈夫よね?」

美紀姉さんと美沙姉さんも同時に言う。

そして、言った後にお互い睨む。

「ちょっと、美沙?今のどういう意味なのかしら?」

「言葉通りだけど?そんなこともわからないのかしら、美紀?」

「とにかく!」

二人が喧嘩しそうになったため僕は少し大きめな声を出す。

「正悟兄さんは僕達のことは気にせずに自分の思ったようにすればいいよ。」

「・・・ありがとう。」

その時だった。

突如、家全体を大きく揺さぶる地震が発生する。

「なっ!?地震だと!?」

「皆伏せろ!?」

僕達は急いで机の下に潜ろうとした時、視界が真っ白に塗りつぶされた。

そして、僕は意識を失うのだった。

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