第5話 初カレの思い出
中二で私は初めて男の子と付き合った。
でも私はまだてんで子どもチャンで、好きだとは思っても、その雰囲気になるのが怖かった。
隣でアイツが急に黙り込んだり、呼吸数が上がったり、些細なことが全てそっちに繋がりそうで、どうしていいかわからなくて、どうして男の子はすぐそっちに進みたがるのかわからなくて。
手を繋いだらキス、キスしたら胸? 触られる? 脱がされる?
触られると胸は大きくなる? 胸の大きい女はバカが多い?
経験すると成績が下がる。
痛いのは女だけ、ダメージ受けるのは女だけ。
そんな、半分は非科学的なデマだと思っても自分の中で折り合いがつかなかった。
どんどん女子力を磨く友人たち。可愛くなったらもっとリスクが増えるだけだと、自分はその中で足踏みしていた。
夕方の公園の木陰で初めて抱きしめられて、押し退けてしまった。
「嫌なら付き合わなきゃいい。付いてこなきゃいいじゃないか。二人きりになるなよ!」
頭を抱えて苦しそうだったアイツ。
初めて「好きだ」と言ってくれた人だったのに。
私は震えて、息が上がって、世の中が裏返った気がして、意識を失った。
アイツは私を抱き上げて、近くの医院に飛び込んで助けを乞うたらしい。
私の初「お付き合い」はそれで終りとなった。
その後約3年、何もないのだから、私の経験なんて、ゼロに近い。
旦那様相手に、自分はどうしたらいいのかわからない。
ヒマワリ畑に行ってお台場に戻る。
今はそれしか考えられない。
東京に帰れなかったら、この屋敷を逃げ出したほうがいいのだろうか?
屋敷の外にはもっと恐ろしいモノが待っているのかもしれない。
ここにはニセモノの私でも、身を案じてくれる人々がいる。
我慢して、抱かれてしまえばいいのか。
いや、それだけは待って欲しい。それだけは……。
我に返ると午後ティーはお開きになっていた。
「まだお身体本調子じゃないみたいですね。疲れましたか?」
サラが心配げだ。
「あ、ごめんなさい、ちょっと昔を思い出してただけなの」
「お昼寝されるのがいいかもしれません」
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