第16話 手術後
手術の日。
母さんと兄さんと夏休み中の羽根と翔も来てくれた。
「絶対に大丈夫だから。いってきます。」
僕はそう言い、手術室に入った。
術後は集中治療室のため、麻酔から冷めたときに母さんと兄さんはそばにいてくれたが、家族ではない羽根とすぐに会うのは現実的には難しかった。
しかし、羽根も翔も手術が終わるまで待っていてくれたことを母さんから聞いた。
羽根に会えたのは次の日に一般病棟に戻ってからだった。
「羽根、手術成功したよ。
心配かけてごめんね。」
羽根は目に涙をいっぱいためて、僕の手を握ってくれた。
「涼太…。」
羽根は僕の名前を呼んだきり、言葉が出てこない様子だった。
「羽根、お願いがあるんだ。
母さんと兄さんも呼んできてくれる?
僕が手術中に見た夢の話を3人に聞いてほしいの。」
3人が僕のまわりに集まってくれたので話しはじめた。
「きれいな花が咲いている近くに河があってね、その河に架かる橋を渡ろうとしたときに、女の人がスープをくれたの。
そのスープを僕が飲もうとしたらね、懐かしい声がしたんだ。
声がする方をみると、それは父さんだった。
橋の向こう側から、
『涼太はまだ橋を渡っちゃだめだって。
スープを飲まずに家に帰りなさいって。
母さんに伝えて欲しい。
自分を責めないように。
俺が病気になったのも涼太が病気になったのも、母さんの責任じゃないんだから。
大介は母さんと涼太、店を守ってくれていることを本当に感謝している。
大介は自分の幸せもこれからは見つけていかないとな。
いつでも皆のことを見守っているから安心して帰りなさい。』
そう父さんが言ってくれたから、
僕は戻ってくることが出来たんだと思う。」
母さんは、お父さんらしいね…と言った。
兄さんは、親父俺の名前覚えていたんだな…俺の夢にも出てきてくれよな…と言っていた。
そして、羽根が精一杯笑って僕にえくぼを見せてくれとき、羽根の瞳から涙が溢れた。
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