姫とメイド
百合宮 伯爵
第1幕
神聖アレストリア帝国の第三皇女、亜麻色の髪と
そんな彼女は、今のところ、だらけ切っていた。
「ふふ、たまの怠惰は、至高の贅沢よね♪」
堅苦しいドレスは脱ぎ捨てて、
長椅子に深々と背を預け、一口サイズの小さなケーキやチーズの焼き菓子をつまみながら、娯楽小説を読み流す。
「いけませんわ、殿下。人目が無くとも優雅でいなければ、一流の淑女とは呼べませんのよ!」
いつから部屋にいたのか、長椅子の後ろから雷を落とすのは、ふたつ年上の専属の侍女、ロザリア・オルベイン。
「もう、驚かさないでよ。ケーキが落ちたじゃない!」
「殿下がいけないのですよ、こんなに汚されて……。これは、お掃除が必要ですわね」
ちろりと、
その
・ ・ ・
ぺろぺろ、ぺろぺろ。
「やぁっ、そんなところ、汚いっ……」
「んくっ、はぁ……、だから、綺麗にして差し上げるのですわ。ほら、もっと力を抜いて。私に身を委ねて?」
ぴちゃ、ぴちゃ。
「あ、だめ……っ、もう、許してぇ……」
「ちゅるっ、くちゅう、ああ、殿下ったら、すごく美味しい……」
……いけない事をしているのではない。
ミアリス姫の身体に零れたケーキを、舌で舐め取っているのだ。
「さあ、綺麗になりましたわ」
すくっと立ち上がり、仕上げに、皇女の唇に付いた焼き菓子を優しく舐め取って。
ロザリアは微笑んだ。
「これに懲りたら、普段から部屋を汚さないこと。よろしいですわね、殿下?」
「ああ、違う意味で、汚されたわ……」
侍女が去った後。長椅子の上には、
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