育つ繭

 高校の卒業旅行で友達数人と写真を撮った。


 女子だけの楽しげな雰囲気に包まれて、私も満面の笑みで綺麗に写っていた。


 しかしよく見ると、私の首に何か変なものが写っている。

 それは緑色の粒で何個も付いていた。

 でもその時はただのレンズのゴミか何かだと思っていた。



 でも違った。

 次の日同じ写真を見た時、粒は消えていたが代わりににょろにょろした緑の線が何本も顔にまで付いていた。

 それでもお気に入りの1枚だったから消さずに、加工で線だけを消して誤魔化した。



 さらに翌日また確認すると、線どころではない太くでっぷりした体型の芋虫が何匹も私の顔から上半身を這いずり周り、身体のあちこちを齧って食い散らかしていた。血まみれで骨まで見えているのに笑ったままの私の姿。食われているのは私だけの。



 気持ち悪くなり写真は直ぐに削除した。




 翌日。


 ダメだった。

 削除したはずの写真は復活していた。


 それに、食われ掛けの私は完全に芋虫の胃の中に収まったようで、芋虫は巨大な繭を作って私のいたはずの場所を奪い取っていた。



 この時、私は知らなくていいことに気づいてしまった。


 私以外の友達は5人。


 繭の数は5つ。


 食った私を栄養に、繭はまもなく羽化するだろう。




 これ以上はだめだと思考を停止した私は自室のベッドの上で呆然とするしか無かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る