井川 徹Ⅱ
俺はさっき彼女に腕を触られ、とっさに薙ぎ払ったら、彼女がこけた。俺は
「すまん。悪かった」
とだけ言った。彼女はうつむいたままだった。怒ってる。彼女は怒っていると思う。俺も怒ってはいる。女子に触られたことに怒っている。今、彼女に触られたいやな感覚が残っている。彼女は立ち上がて、
「私こそ、ごめん。触れるのいやだったよね。本当にごめん」
彼女は下を向いたままそう言った。でもすぐに顔を上げて
「でも、私をこかしたことには変わりはない。だから今日、一緒に帰ってくれたら許す」
俺は彼女があまり怒ってない事が分かったから、俺は仕方なく質問に答えた。
「なら、一緒に帰らない。一生怒ったままでいいよ。俺には関係ないから」
と正直なことを答えた。
「酷い、酷すぎるよ徹君。ならお願いことを一つだけ聞いて」
それはさっき俺が彼女が後ろにいるのがうっとしいから「何か用か」と尋ねた時に俺が「聞くだけならいい」とも言ってしまった。だから
「聞くだけなら」
と彼女に言った。そしたら、彼女が喜んだ。これは俺に不可能なことを言ってきそうな予感がした。だから俺は彼女が喜んでいるときに、こっそり帰ろうとした。
「ちょっと、まだ何も言ってないのに帰ろうとしないでよ」
彼女は俺が帰ろうとしている事に気づいた。だから俺は
「聞くだけならいいよと言ってから10秒たったから。タイムオーバーだ」
彼女はむすっとした顔をした。
「そんなの聞いてない。別に徹君にできない事を頼んだりしないよ」
俺はまた、腹が立ってきた。
「なら、さっさと要件を言え」
俺は彼女をせかした。そしたら、彼女はニンマリとした顔で俺のほうによって、周りに聞こえない声で
「徹君って今人気小説家の井川イッテツだよね。井川先生」
俺はもう何となく彼女が言いそうな事がわかってきた。サイン欲しいとか、公開してない本を読ませてくれとかだろ。でも、井川先生と彼女に呼ばれるのがものすごくむかつく。
「だから、公開してないとか小説とか、ボツが出たりした小説でもいいから頂戴。毎月。2ヶ月に一作でもいいよ。何なら、一週間に一作でもいいよ。もちろん友達見せるから印刷したものね」
なんで俺が彼女のために小説を書かないといけない。でも、公開してないとか、ボツ作品なら20冊くらいあったかな。でも友達に見せることはやめて欲しいが彼女の事だからきっと見せるだろう。
「別にいいが、まず聞きたいことがある。なんで俺が井川イッテツだと気づいた?」
俺はこのことが一番気になっている。
「そんなの簡単。イッテツを漢字にすると、一と徹になって、一をとったら井川徹になることに気づいた。幼馴染には簡単すぎるよ。安心して他の子は気づいてないから」
なるほど、幼馴染から見たら簡単な問題ということか。それなら、少しは納得いく。
「わかった、上げるよ。俺の未公開小説。ただし、俺が井川イッテツていうことは誰にも言うな。それと学校で俺にその小説を見せようとするな」
彼女は嬉しそうに
「了解しました。井川先生」
さすがに俺の限界が来た。
「少し調子乗りすぎだ。次それ言ったら、どんな目にあっても知らんぞ」
俺は忠告だけした。俺は家に帰って、未公開小説を二作彼女に渡した。しかも彼女の家に行って。自分で取りに来いって言いたくなった。彼女は
「ありがとう。じゃあ、また明日、」
俺は無視をして「お邪魔しました」とだけ言って家に帰った。自分の部屋に入って、ベットに体を投げた。
—俺は彼女が好きだった。今も彼女が好きだったら、あの笑顔を見たら、顔が赤くなっていただろう。でも、俺に彼女を好きになることが出来ない。どうしたら、誰かを好きになることが出来るのだろう。俺は女子が嫌いになったときに、好きという気持ちを失ったのかもしれない。俺は誰も好きになれない。なったとしてもそれは、偽物の好きだ。俺はこんな事しか考えることが出来なかった。なんせ俺はできない事からすぐに逃げる癖があるから―
俺はそのまま寝て朝を迎えてしまった。
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