第39話 良い嘘と悪い嘘?
「ご主人様、すみませんブ。命力を多少コントロールできるようになったから上手くできると思ったんですブ。」
天国という名の仙の胸に飛び込んで天国体験から帰ってくると仙が涙を流しながら謝罪してきた。
俺が欲望に負けて死ぬと分かっているのに天国に飛び込んだのが悪いんだ。
「良いよ、良いよ。向上心があるのは良いことだから。」
そう、仙は悪くない。
仙は俺の願い(欲望とも言う)を叶えてくれるために頑張っているのは分かってる。
しかし俺の言葉を聞いても仙の顔は晴れない。
う~ん、どうしたもんか。
ここは話題の転換を計ろう。
ちょうどかなり気になる言葉も言ってたし、主に俺のプライド的に。
「仙、いつまでもクヨクヨするな。いつか上手く力をコントロールできるはずだ。話は変わるが仙は命力をコントロールできるようになったのか?」
「サクラには及びませんがこのようにある程度はコントロールできるますブ。」
そういうと仙の右手に命力が集まっているのが分かる。
なんで分かるかって?それは俺が世界に類をみない天才だからさ。
・・・すいません。嘘です。命力感知スキルのお陰です、はい。
そ、そんなことよりも仙がサクラさんのことを呼び捨てにしている。
何時の間にそんなに仲良くなったんだ。おかしい俺のほうが半日ほどとは言え長い付き合いなのに。
アレか死闘を繰り広げた後に互いを認め合うとか拳と拳で語りあうみたいな流か。
でも拳と拳の語り合いなら俺もサクラさんと模擬戦したわけだから同じだ。ここに反論の余地はない。
ならばどうして仙は俺以上にサクラさんと親密なんだ。
拳と拳の語り合いが違うなら死闘を繰り広げた後に互いに認め合うパターンだな。
それに仙は死闘を繰り広げた後死んでアンデットになったわけだから更に上級のコミュニケーションをしたわけだ。
そりゃ俺よりも親密度が上がってもおかしくないな
この理論でいくと俺もサクラさんと死闘を繰り広げればサクラさんを呼び捨てができるほどに親密度を上げられるわけだ。
俺もサクラさんを恋人同士みたいに呼び捨てにしたい。
でもサクラさんと死闘を繰り広げたら俺は身体を真っ二つにされて再び転生する未来しか見えない。
待て待て待て、死闘を繰り広げた後に親密度が上がったからって恋人になれるのか。
だって相手は殺そうとした相手と殺されかけた相手だぞ?
確かにマンガや小説では殺し合いをした相手と和解して終いには結婚したりするパターンがあるけど。
実際問題、俺が殺されかけたらトラウマになって恋人どころか視界にいれただけで動悸が乱れそうだ。
アレ、結論、俺はサクラさんを呼び捨てにできないってこと。
流石に死んでまでサクラさんを恋人呼びしたいわけじゃない。
命をかけるならせめてサクラさんの胸部にある天国を体験できるくらいの特典が無いと無理だわ。
俺気が付いちゃった。
サクラさんにお願いすれば抱きしめてもらえるんだった。
つまり恋人呼びできなくて良いってことだな。
サクラさんにお願いしたら仙に号泣されるからやらないけど。
なんかいろいろ考えたけど、現状から何も好転しないってことを再認識しただけだ。
話を命力に戻そう。
こうそく思考スキルのお陰でこういった内容は一瞬で考えられるから仙を放置しているわけじゃない。
『コレがM気質の旦那がよく妄想している放置プレイってヤツっすね。』
オイ、何か静かだなと思ったらトンでもない爆弾を放り込んできたな。
俺はそんな妄想してないぞ。ほんとだぞ。
『まぁ、そういうことにしておくっす。ただオイラに嘘は通じないっすよ。』
クソ、まるで俺が誤魔化しているように思われるじゃないか。
ヤスとやり合っても泥沼に嵌る未来しかない。
癪だが無視するしかない。
それよりも今は仙がどの程度命力を扱えるのか知りたい。
なぜかってそれは俺は命力を感知できるけど、それだけだ。
なのに仙はもう命力を操っているのだ。
だから俺は仙の主人として火急速やかに命力を操る術を身に着けないとダメだ。
これは別に嫉妬しているわけじゃない。
仙は俺と違って純粋な資質の持ち主だしサクラさんが認めた実力者の上に努力もしているんだから命力を操れるようになっても何も不思議はない。
ただココで俺が命力を操れないことがバレると主人としても威厳が損なわれるかもしれない。
そうすると仙にキラキラした目でご主人様って言って貰えなくなる。
それは避けたい。
アンデット化されたから仕方なしにご主人様って呼ばれるのは呼ばれるのは・・・・それもアリ・・・いや俺はMではないからダメだ。
つまり仙にバレないように仙から命力を操るコツを盗むんだ。
この行為自体が既に威厳を損なう行為かもしれないがバレ無ければ大丈夫だ。
世の中には良い嘘と悪い嘘があるって誰かが言ってた。
これは言うなれば良い嘘なんだ。
『仙を自分の自尊心を損なわないために利用するってどうなんっすか?』
聞こえな~い。聞こえな~い。
「仙、命力を使ってその岩と砕いてくれ。」
「分かりましたブ。」
仙は命力を込めた右手を振り上げて自分の身長以上ある大岩に手刀を叩きつけた。
全力で振られた仙の手刀は風切り音のスパっという音を放った。
しかし大岩は砕けなかった。
「・・・え?」
おかしいぞ。確かに仙の手刀が大岩と接触したのは間違いない。
あまりに手の振りが速すぎて全部が見えたわけじゃないけどそれは間違いない。
大岩との位置関係からして空振りってことも考えづらいどういうことだ?
それならどうして大岩が砕けた音がしない?
「ご主人様、どうですかブ。」
困った。
そんなキラキラした目で聞かれてもなんて答えれば良いのか分からない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます