第9話;ゴーレム「幸福な王子」
「幸福な王子」あらすじ(ウィキペディア)
ある街の柱の上に、「幸福な王子」と呼ばれる像が立っていた。
かつてこの国で、幸福な生涯を送りながら、若くして死んだとある王子を、記念して建立されたものだった。
両目には青いサファイア、腰の剣の装飾には真っ赤なルビーが輝き、体は金箔に包まれていて、心臓は鉛で作られていた。
とても美しい王子は街の人々の自慢だった。
しかし、人々が知らないことが有った。
その像には、死んだ王子自身の魂が宿っており、ゆえに自我を持っていること。
王子が、この町の貧しい、不幸な人々のことを、嘆き悲しんでいることである。
渡り鳥であるが故にエジプトに旅に出ようとしていたツバメが寝床を探し、王子の像の足元で寝ようとすると突然上から大粒の涙が降ってくる。
王子はこの場所から見える不幸な人々に自分の宝石をあげてきて欲しいとツバメに頼む。
ツバメは言われた通り王子の剣の装飾に使われていたルビーを病気の子供がいる貧しい母親に、両目のサファイアを飢えた若い劇作家と幼いマッチ売りの少女に持っていく。
エジプトに渡る事を中止し、街に残る事を決意したツバメは街中を飛び回り、両目をなくし目の見えなくなった王子に色々な話を聞かせる。
王子はツバメの話を聞き、まだたくさんいる不幸な人々に自分の体の金箔を剥がし分け与えて欲しいと頼む。
やがて冬が訪れ、王子はみすぼらしい姿になり、南の国へ渡り損ねたツバメも次第に弱っていく。
死を悟ったツバメは最後の力を振り絞って飛び上がり王子にキスをして彼の足元で力尽きる。
その瞬間、王子の鉛の心臓は音を立て二つに割れてしまった。 みすぼらしい姿になった王子の像は心無い人々によって柱から取り外され、溶鉱炉で溶かされたが鉛の心臓だけは溶けず、ツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられた。
天国では、下界の様子を見ていた神が天使に「この街で最も尊きものを二つ持ってきなさい」と命じ、天使はゴミ溜めから王子の鉛の心臓と死んだツバメを持ってくる。
神は天使を褒め、そして王子とツバメは楽園で永遠に幸福になった。
「建造当初は大変奇麗に彩色され、宝石が埋め込まれた絢爛な像だったんだそうです」
いきなり話し始める修道女、メインストリートの噴水の中央に建つ塔の上にあったらしい、いつの間にかさびれた公園の片隅にごみのように瓦礫と共に置いてあった像を引っ張り出してきたそうだ。重かっただろうにすごい力だ
「はぁ・・・」
「なぜかその美しかった光景が記憶にあるのです、せめて記憶の美しい状態に戻せないかと泣けなしのお金でこれを・・・」
「ガラスですよねそれ・・・宝石じゃないですよね」
「・・・お金が無くてガラスしか用意できないのです」
「まぁ、綺麗ですけど・・・それ無理だと思いますよ・・・すぐ取れちゃいます」
「・・・・専門家じゃないのでどうすればいいのか」
なぜ私にそんなことを言うのか解らない。私も石像の修理方法なんて知らないよ
でも・・・石像だよね・・・なにかな?おとぎ話と違う、廃棄されて無いし、それになんだろう違和感が
「お姉さん、それじゃぁ石像がパテ像になっちゃいますよ」
「わたしって芸術の才能からっきしなのよね~」
「こうすれば少しは」
パテを欠けたところに塗り魔法で固めると
「うわぁ凄い石のようになってる」
「そこの灯篭の欠片を少し粉砕して混ぜました、ちゃんともとのラインに沿って塗らないと」
お姉さんが塗るとぼてっとこぶのようになってしまった
「・・・なぜ・・・」
本当に不器用なようだ
「お願いします、手伝ってください」
「ああ、ごめんなさい冒険者ポイントを稼がなきゃ行けないので、そんな暇ないです」
「そこを何とか」
「ごめんなさい、まだ50ポイント稼がないと」
「依頼します!ギルドに!・・・・報酬はそんなにお出しできませんが」
「・・・依頼が通ったら考えます」
そう言ってその場を離れた
ツバメと言ったその修道女
「え?つばめ?まさかね~いやいや・・・そういうこと?いやいやいや・・・・」
次の日のんびりとギルドに来た私は依頼の掲示板の前に立った
もういい時間なので、めぼしい依頼はなくなっている
「残り物に福はあるかな?・・・出てるかな修理依頼・・・あれ?でてない?」
「アイラさん!」
「うわっビックリした」
ギルド受付のメアリーさんが声を掛けてきた
「指名依頼がでてますよ」
「指名依頼?」
「修道女のツバメさんからですね、いつのまに『かわりもの修道女さん』とお知り合いに?」
「有名なんだあのお姉さん」
「そうですね、石像に語り掛ける姿は不気味ですからね」
「はっはっはっ・・・語りかけてるんだ・・・」
「あの石像修復出来るんですか?かなり欠けてますよ」
「まあ、まったく元に戻すのは元の姿を知らないので無理ですが、見れるようにはできるかと」
「ありますよ元の姿のレプリカ」
「え?」
「ブロンズ像が、噴水中央の塔の上にあります。、前のものは煌びやかだったみたいで、小さいですけどそれを模してブロンズ像を作ったらしいです」
「それで石像を捨てたんだ」
「そうですね、もう200年も前ですが」
「まあ、あの執念に関心したので引き受けますよ」
「そうですか、報酬は少ないけど、難易度が高いのでギルドポイントは50ですよ」
「!本当に?あっと言う間に100ポイント!やった」
「成功しないとだめですけどね」
「・・・・・がんばります・・・・・」
噴水塔の上のブロンズ像を『立体スキャナ』スキルでコピー・・・
高さ20センチ位?土台の割りに小さすぎでしょブロンズ像・・・近くの五階建ての高級ホテルの最上階からしか見えないじゃん
さびれた公園に向かった
「ツバメさん」
ぶつぶつと石像に話しかける姿が目に入った
(やっぱり・・・あの石像は・・・魔獣化してる)
「石像とお話し出来るんですか?」
「え?あ、アイラさん・・・そんな訳ないじゃないですか・・・ひ・・独り言です」
(でもなんだろう、邪悪な感じがしないな・・・!!あれ?これって)
「始めますよ、まずテントを張ります、ギルドを通して役所に許可は貰ってありますので」
「え?テント?台座?え?おっきいテント何処から出たの?」
おろおろと私のすることに右往左往しているツバメ
石像を台座に置きその周りにテントを張る、ツバメの持っていたパテと瓦礫の中にあった石を粉砕して混ぜたものをどんどん作り周りに置いた
「ツバメさん、時間がかかりますので家に帰っていいですよ。また明日お昼ごろに来てください、その時ポケットの中の黒い石を忘れないようにね」
「?・・・え?わかりました、よろしくお願いします」
ちらちらっと石像を眺めてテントを出て行った
「さてと、立体スキャナ映像を像に重ねて展開」
バケツからパテが渦を巻くように石像に付着していく、くっつけるだけでなく、削ったり回したり
【くすぐったい】という頭の中の声は聴かなかったことにして作業を続けた
どうにか形になったのは作業を始めて5時間、魔法で固めたけど馴染むまで数時間かかるかな?
「関節動くようにしたけど、不気味かな?これが動いたら・・・不気味かも」
次の日
公園のテントに向かうと修道女のツバメさんと誰かが言い合いしていた。
「いい加減にしろよ、石像ばかりにかまけて、教会の仕事もおろそかになっているだろう」
「貴方には関係ないでしょう。こんなところに居ないで食堂のマイさん所に行けばいいじゃない」
「マイさんは関係ないだろうが」
「いつも食堂で仲良くしてるじゃない」
「お客とウエイトレスだろうが、話ぐらいするわ」
「鼻の下伸ばしちゃっていやらしい」
「おまえな、何言ってんだよ」
「嫉妬ですね」
「!?」
「あ・・アイラさん?」
「恋人ですか?ツバメさんの」
「え?いや・・・その・・そんなんじゃ」
「違うのかよ、俺はそのつもりだったけど、結婚しようって言ったよな?」
「え?あの・・その・・冗談じゃ?修道女ですし・・・」
「ツバメさんは修道女見習いで正式に出家してないので問題ないですね」
「えっと君は?」
「こんにちは、冒険者のアイラです。石像の修復の依頼を受けて其処のテントで修復してます。」
手を出して握手を求めた
「初めまして、ツバメの恋人のカールと言います。よろしく」
ふわっと花のにおいがした
「花の匂いが・・・」
「ああ、俺んち花屋なんだ。今も貴族の屋敷に行ってきたところで」
後ろにカラフルな荷車が見えた
「えっと彼、この町でフラワーアレンジメントがすごいって有名で・・・」
もじもじし始めるツバメ
「そんな彼に私なんかが・・・つり「そんなこと無い」あわ・・・」
「ツバメ・・・俺は小さな鳥や動物にやさしい君が好きなんだ」
「カール・・・」
二人は見つめ合った
「コホン!・・・後でやってもらえます?」
「「あ////・・・・」」
「石持ってきてくれました?」
「あっハイ・・これですか?」
私は石を受け取ると
石造の胸の穴に入れて穴をふさいだ
「魔石はすぐに体になじんだね、ツバメさん最後の仕上げです、心臓部分に魔力をゆっくりと注いでください」
「え?・・こうですか?」
ツバメが魔力を注ぐと石像が光りだし
ぎぎぎっ
石像が動き出した
『ご主人様ありがとうございます』
胸に手を当ててお辞儀をする石像
「ええっーーーーー」
「貴方の神獣、ゴーレム王子です!」
私はにっこりとゴーレムを紹介した
「さ、名前つけてあげてね」
「アーサー・・・念話じゃなくて声がする・・・・」
涙目のツバメだった
「ゴーレム?神獣?え?え?」
カールが混乱している
「ツバメさんテイマーの素質があるみたいですね」
『ご主人様の役に立ちます』
「その荷車、花とか木を積むと重いでしょう?ゴーレムだから力持ちだし、防御は桁違いに高いからツバメさんと彼氏さんを守ってくれますよ」
にこっと呆けている二人に微笑んだ
『ご主事様とご主人様の大事な人守る‼』
「大事な人って・・・///・・・」
「時間が経てば、もう少し話も上手になると思いますよ」
いつのまにか二人しっかりと手をつないで、揃って神獣ゴーレム王子を見つめている。
「王子が従者みたいになってるけど・・・まっいっか上位種でも魔獣だし」
ツバメに依頼達成のサインをもらってその日は宿に戻った
次の日ギルドに入ると受付のメアリーさんが目の前に並んでいる冒険者をどけて
「こっちこっちアイラさん」
大声で呼んだ
「ちょっメアリーさん声大きい!」
そう言うとちょっと小声になって
「どういうことですか?石像がゴーレムになったって、朝一で『かわりもの修道女さん』が魔獣登録にきたんですけど!」
「ツ・バ・メ・さんね、もうかわりものじゃぁなくなりましたね」
「・・・・石像がゴーレムに簡単になるんですか?」
「ならないと思いますよ。あの石像自体がゴーレムの石で出来てたみたいで、それがツバメさんのテイマーのスキルで目覚めたのでは?・・・・推測ですけど」
「はぁ・・・・」
ため息をつくメアリーさん
「えっと、報酬をいただいても?それとポイントも」
依頼書をそっと前に出す
「報酬金貨2枚です」
「?あれ依頼書の金額より多いですけど」
「ツバメさんの彼氏さんが追加報酬を出されたんですよ、お礼言っておられましたよ」
「よかった、仲直りしたみたいですね、それならありがたくいただきます」
パンパンと手をたたいて拝んで金貨を仕舞った
「縁結び・・・」
「?」
「縁結びのスキルでもあるんですか?」
「ないですよそんなの」
「だって、魔女さんと息子さんの仲を持ったり修道女さんと彼氏さんを仲直りさせたりとか」
「え?何もしてないよ」
ジトっと見つめてくるメアリー
「無理ですからね二組とも、もともと好き合ってる二人じゃぁないですか」
「おいっまだか!」
後ろから声がした
「じゃぁ、短い間ですがお世話になりました」
「あっアイラさん・・・気をつけて、またこの町に来てくださいね」
踵を返して早々にギルドを後にした
これでポイントがたまったので町を出れる
少し物資を足して早々に出発しようっと
私は、商店街に向けて歩き出した
物資を調達してマジックバックにしまうと、ちょと顔見知りになった人たちに挨拶をして馬を取りに行って町を出た
パン屋の横の食堂で魔女のおばあさんが赤ずきんさんとお茶を飲んでいた
「さみしくなるね」
足元にはあの狼(フェンリル)がくつろいでいる
「少し話しただけだったけど、とてつもない力…攻撃力とかではないが何と言うか恐れ多い感じがする子だったよ」
「確かにすごい子だったよ・・・闇に飲まれた狼を救って、救った狼が神獣のフェンリルに進化・・・まさかね・・・」
「聞いたかい?あの『かわりもの修道女』が語りかけてた石像が神獣のゴーレム王子になったらしい」
後ろのお客さん男性二人ががツバメの話をしていた
「神獣は、そこにいるだけで神の恩恵が受けられるって神話にあったけど、この町は神に守られるってことだよな」
「本当ににそうならこの町はますます発展するぞ」
「おばあちゃん・・・これって・・」
「そうさね、この子が神獣ってことはまだ一部の人間しか知らない、町に2体の神獣・・・」
町に神獣の話が広がりそれに私がかかわっていたことが知れた頃、国境の町に到着した
「寒っ」
〈ようこそ国境の町ウラジールへ〉
「看板も凍ってる」
馬を預けてギルドに向かう、目的の教会のある廃村の情報を得る為に
「廃村?う~ん・・・メサイヤかな?」
エルフの受付のお姉さんがそう言った、どうも国境を越えなくてもよさそうだった。
「ここから徒歩で5日ほどの北の山奥にある村で100年前に廃村になってますよ、豪雪地帯で今から登ると春まで帰ってこれません、あと数週間後には雪が降り始めますから、行くのは危険です」
「ご心配なく、雪は好きです、寒さは…どうにかなりますので」
「遠い先祖の墓参りなんて来年でもいいでしょうに、命より遠い先祖の墓参りが大事?」
「祖父の望みなんです・・・うるうる」
(我ながらゆるいうそだなぁ・・通じるかな)
「自己責任でお願いしますよ」
(通じた)
山に入る許可を貰った私は馬を預けている馬屋に、春までの料金を払って絶対に転売しないでとお願いして、さっそく山に向かった
死んだって思われて馬を売られないように念を押しておいた、愛着沸いちゃったのよね~
雪が降り始めた頃、国境の町ウラジールに第二王子とその側近達が到着した
その側近の中に傭兵上がりの冒険者、ギルの姿があった。
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