第4話;ざまぁへの布石
舞踏会の翌日から3人は王都観光を始めた。
アクセサリーショップやドレスのお店、高級スイーツのお店などを回りどんどん買い込んでいく。
「帰り私たちの乗るスペース無いかもね」
そう言って重い荷物を両手に抱え、ため息をつくロザリーだった。
案の定、荷馬車にスペースは無く、御者台に座るしかなくなった私たちは小雨が降る中、外套を着こみ御者の横に座った。
王都を馬車で走っていると
「なんだか騎士風の人が多いわね」
そうロザリーがつぶやくと、御者が
「なんでも舞踏会に現れた美しいお姫さんを探しているらしいよ、舞踏会に来ていた<貴族令嬢>のリストにそれらしい人が居なくて、庶民じゃないかって探してるらしいけど、王城にそんなに簡単に庶民の娘がいけるもんかね、それにドレスなんて準備できるわけ無いのに、手がかりがつかめずに焦ってるらしいよ・・・」
(ま・まずい・・・・え?もしかして私を探してる?やばい・やばい・やばい)
あせっていると、騎士の中に王子の姿を見つけてしまった、一瞬目が合った気がしたが馬車はそのまま王都の門に向かって走っていった。
(大丈夫よね、髪の色も、肌も化粧してないから日焼けのままだし、メイド服だし顔も髪で半分隠れてるし)
見つかることを危惧していたが、ボーネット伯爵領までは何事も無く無事着いた
「あーお尻が痛い・・・本当に最悪な旅だったわ・・・」
追加料金をさらにもらって、ぼやいてはいるが顔はにやけているロザリーだった。
「そういえば、あんたって幾つになるの?」
藪から棒に聞いてくるロザリー
「・・・・後5日で16歳よ」
「え?もうそんな年なの?」
「小さいのは自覚してるからあんまり見ないで・・・」
舐めまわすように下から上まで見るロザリー
栄養失調で体が小さいのはしょうがない、それでも覚醒してからは、目を盗んで食べている、料理もかなり腕前が上がっていると思う。
(舞踏会では魔法で体を成長させて見たんだった、胸が少しと、身長も少ししか変わらなかったっけ・・・胸は寄せてあげて、10㎝ヒールは魔法使わないと転んでたわね・・・ヒール・・・あの靴はどうなったのかしら・・・普通の靴だから、おとぎ話のように私しか履けませんってしろものじゃないしなぁ・・・)
その頃王宮では靴を残した姫の捜索が暗礁に乗り上げていた。
「招待状を出していたのを門番兵士数人が見ております、貴族なのは確かだと思われますが・・・令嬢のリストの方々はすべて把握できておりますが、あの令嬢は居ませんでした」
そう書類を王子に差し出しながら宰相がため息をつく、街の仕立て屋を回ったがあのドレスを作った仕立て屋は無かった。
コンコン
第二王子の執務室のドアが叩かれた
「入れ」
王子が暗い顔のまま答えると兵士が入ってきた。
「失礼致します、休暇中だったもう一人の門番が出勤してまいりましたので連れてまいりました。」
門番の一人が舞踏会の後、長期休暇で居なかったため聞き取りができていなかった。
旅行に行っていたらしく連絡も取れずにいた。
「あ・・あの自分何かしましたでしょうか?」
「いや、舞踏会の時のことを聞きたかっただけだ」
「舞踏会?」
「最後、美しい姫がやってきただろう?」
「・・・・ああ、あの若くて美しい伯爵家当主のご令嬢ですね、いやぁ招待状を確認すると令嬢じゃなくて当主でしょう?一瞬え?ってなってしまいましたよ、保護者も居ないし、でも当主ですし招待状は本人だと証明してるのでお通ししました、問題ありましたでしょうか?」
宰相と王子はぽかんとしていた
「当主だと・・・家名は!家名は?・・・・」
手元の書類をめくっていく
「ボーネット伯爵家当主 ファティマ・ボーネット 15歳」
「ボーネット伯爵家ですと!?」
「社交界では見たことないな」
「確か、グレンバレット公爵の3男が婿に行っているはずです、公爵の反対を押し切って婿に行ったので、社交界ではあまり相手にされていませんでしたね、結婚してしばらくしてお子様が出来たので、早々に領地に戻られたと記憶しております。」
「その3男が当主じゃないのか?」
「確か、ボーネット伯爵家の前の当主は奥様の方だったかと・・・奥様はどうなさっのでしょうか?」
「至急調べてくれ」
「かしこまりました」
宰相が部屋を出て行った、兵士たちも下がったので部屋に一人になるフェルディナンド王子
名簿の名前を指でなぞる
「ファティマ・・・可愛い名前だ」
ぞくぞくぞく
「ん?何か背中に触れた気が・・・?」
床の掃除をしながらそう呟くファティマだった
グレンバレット公爵家に手紙がちょうどその頃届いていた。
「兄上、ロバートが婿に行った伯爵家から手紙って何ですか?今更」
「・・・これはどう言ううことだ!あいつは何をやっているんだ!」
「兄上?」
「見てみろ」
グレンバレット公爵家当主アルバート、ファティマの父親の長兄である
傍にいるのは補佐をしている次兄のジョイル、
アルバートから手紙とそれに添えられている書類を見てジョイルは絶句していた
手紙には、
グレンバレット公爵家の家督を王家に返上するという内容と、その時ボーネット伯爵領をグレンバレット公爵家に移譲したいという契約の女神の正式な書類が入っていた。
そして家督返上と共にロバート殿を返したいなどと書いてあった、経営者としては優秀なので邪魔にならないだろうと、何か冷たい印象の内容だった。
「領地にいないだと・・・」
「この内容だと、娘が一人で領地に居たような内容ですね」
「契約を正式な物にしたいので、自分は領地を離れられないから、グレンバレット公爵家の決定権を持つ人に来てほしいなどど・・・日にちましてしてあるな・・・」
「兄上?」
「どう思う?」
「聡明な娘のようですね、面白い・・・と思います」
「ロバートは一途で、夢中になると周りが見えなくなるところがある、事業に夢中になっているんだろう・・・」
「冷たい印象のこの手紙、親子関係はうまくいって無いようですね」
「ジョイル、行ってくれるか?」
「解りました、娘はどうします?」
「家督を返上すれば平民となる、どう生きて行くつもりなのか・・・連れて帰ってきてもよい」
「解りました」
「王子、調べてまいりました」
そう言って宰相が再びフェルディナンド王子の元にやってきた
「そうか、どうだった?」
「それがどうも可笑しいのです、奥様は12年前に亡くなっていまして、最近までは元グレンバレット公爵家3男のロバート殿が当主だったのですが、ファティマ殿が15歳になるのと同時に自動的に当主をゆずる手配を10年前にしてありました。それはいいのですが、・・・・ファティマ殿の気配が無いのです、ボーネット伯爵家の、隣の領地の侯爵家の方々がまだ王都に滞在されていたので問い合わせてみたところ、お茶会にボーネット伯爵の奥方と娘を何度か呼んだことがあるらしいのですが・・・その中にはファティマという娘は居なかったそうです、しかしそれも可笑しい、ボーネット伯爵の再婚の手続きは出ていません、奥方は居ないはずなんです、居ないはずの奥方が居て、居るはずの令嬢が居ない・・・何か可笑しい、直接行って確かめさせた方が良いと思われます。」
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