零感の自分が聞いた霊感のある家族の心霊体験談
渡利
第1話 右足が47体のしゃれこうべに変わった話
まずはじめに。
タイトル通り、自分は霊感というものがない。いわゆる零感というやつだ。
夏の特番で毎年恒例放送する心霊映像特集を「こんなのが本当にいるのか」と怖いもの見たさで視聴しては、従来のビビりが祟って鏡の前に立ったり、トイレや風呂に一人で入るのが怖くなる阿呆でもある。誰にでもあるよね。
一方で、合成CGを駆使した加工による心霊映像や写真も多くなっていることから、お化けや幽霊なんて本当に存在しているのか疑わしくも感じる時がある。実際、おばけなんてないさと幼い頃によく歌ったものだ。
しかし、そんな筆者にも幽霊やおばけってもしかして本当にいるのではないか?と彼らの存在を信じるようになったきっかけを、これからゆるく書いていきたいと思う。
結論から言うと、心霊写真にバッチリ写ってしまい霊障に遭った。しかも結構ヤバめの。
時は筆者がまだ小学校低学年の頃。両親に連れられて妹と共に家族4人で宮城県にあったとあるホテルに宿泊した時のことだった。
そのホテルは現在廃業してしまっているが、当時そのホテルには大人用と子供用の屋内プールがあった。筆者は久しぶりの家族旅行にはしゃいでいた。その時、子供プールにてある女の子とその母親と仲良くなる。この女の子と母親はもちろん生きている人間であることを一応補足しよう。
問題はここからだ。女の子の母親の方から、記念に写真を撮ってもらったのだ。
―――ポラロイドカメラ。そう、撮影するとすぐ現像されて出てくるあのカメラだ。ということは加工はできないのよね。お察し案件。
筆者も写真を見たけど心霊写真だったとは夢にも思わなかった。だって普段写真をそんなにまじまじと見ないし、実をいうとプールで泳ぐのが楽しくて興味がなかったのだ。
その子の母親が記念写真を筆者の母親―――区別するためにマーマと記そう。マーマへ渡し、家族旅行から無事にわが家へ帰宅した。
写真を確認していたマーマが、写真に写るその異常すぎるわが子の有り様に仰天し霊感の強い父親に見せて相談した。
父親、声を上げてビビる。
幼いころから今まで生きてきた中でどの心霊体験が一番怖かった?と聞くと必ずこの心霊写真を挙げる父親。それほどまでに写真がやばかったのだ。
まず、特出すべきは写っている霊のその数。―――47体。
にこやかに筆者と女の子が2人でダブルピースしている一件微笑ましい写真だが、なぜだか筆者の右足は47体のしゃれこうべに変わっていた。
なんでやねん。東北民だけどそう突っ込まずにはいられないほど惨たらしいものだったようだ。
両親はさっそく神社へ行って神主さんにそのことを相談・写真を見せると、真剣な表情で断言した。
「これは大変なことだ、今すぐにお祓いとお焚き上げをしなければ将来この子の右足が無くなるかもしれません。」
詳しく写真を調べると、右足のみならずいろんなところにも幽霊がいたらしく合計124体だったらしい。
―――なんでやねん。本当に。
両親はすぐお祓いをお願いし、その日のうちに写真は火の粉と一緒に燃えて消えた。これでもう大丈夫、そう両親はほっとした。
ところがどっこいそうもいかなかった。なんでだ。
わんぱくで元気いっぱいのゴリラ小学生だった筆者は、共働きの両親により学童保育へ預けられていた。午後3時ころ、ジャングルジムに登って遊んでいたその時。急に足を滑らせたのか一番上から落下してしまったのだ。―――実を言うと落ちた際の記憶はあんまり覚えていない。
幸い、見た目は間抜けではあるが尻で着地したため骨折などの大きな怪我はないはずだった。右足の脛以外は。
そう、筆者は尻から落ちたというのになぜ右足の脛に怪我をしているのか。落ちた時の尻の痛さと傷の驚きでパニックになり泣く筆者を、学童保育の先生が病院に連れて行ってくれた。
まず最初にビックリしたのは医者だった。
「……なんでお尻から落ちたというのに、脛から骨が見えるほどの傷をこしらえたの?」
―――そう。怪我をした右足の脛には太くてたくましい紫色の骨がこんにちはしていたのだ。おまけに痛みも出血もほぼ無い。運がよかったのか骨折はしていなかったが、その不可思議すぎる患者の外傷に医者も首を傾げるしかほかなかった。
処置を終えたころに、会社を早退して両親がすごい顔で病院に駆けつけてきてくれた。もう大丈夫だよ、怖かったね、と慰めてもらえると内心喜んだ筆者の期待は、すぐにお説教とげんこつで打ち砕かれた。
しかし、その内容は注意不足ではなく。
「どうしてお守りを持ち歩かなかったの!?」
…………なにそれ状態だった。だってお守りなんて受け取ってませんけど。
話を聞くと、どうやらお祓いの後に神主さんからお守りを頂いたらしく、登校直前に筆者のランドセルの小さなポケットに突っ込んだとのことだった。
―――聞いてないよぉ。あとジャングルジムで遊ぶときにランドセル持っていくわけないじゃん。ちなみにそのお祓い、写った本人連れていってもらってないんですけど。効いてないよぉ。
それを聞いた医者は困った顔をしたものの、「お大事に」と見送ってくれた。
傷は完治したものの、それから数年の間はお守りを肌身離さず持ち歩く日々が続いた。それ以降何度か右足を負傷するようになり、右足を怪我すると「また右足かよ」と呆れられる。こっちは好きで怪我してるわけじゃないんですけどね!!
今もその傷跡は生々しく残っており、神経ごと持っていかれたのか触っても何も感じない脛の窪み。この事件から、筆者は幽霊の存在を信じるようになったのであった。
―――後日談ではあるが、ある時に妹が菓子の缶ケースに保管されていた古い懐かしい写真を整理していた。
「……うわっ!何この写真、気持ち悪っ!!」
…………撮った写真は1枚だけではなかったのだ。なんでやねん。そろそろ泣いちゃうぞ。
2枚目は別にお焚き上げしなくても問題ないと言われたそうで、しかし捨てるわけにもいかずそのまま取っておいてしまったらしい。ドウシテ……。合計300体以上になってしまった。
後日わかったことだが、なんでこんなことになったのかというと。例の女の子の家系がそういう家系だったらしく。検索すれば出てくるけど某文豪と同じ苗字でした。思いきりわかりやすすぎる〜〜〜ッッッ!!!人間万歳どころではないよ。
……本当にあった怖い某番組に投稿すれば一発で載せてもらえるかな。それともヤバすぎてお蔵入りになるのかな。
ちなみに、筆者はその写真を二度と見てはいけないとのこと。見たら最後、ということらしい。こちらだって願い下げですけどね。怖いもん。
それではこれにて、背後から妹のドン引き声を浴びつつ当時のことを懐かしむなどをして今回のお話はここで終わりにいたします。
こんな感じにふと思い出したら構成など無視してゆるく書き連ねていこうかと思います。
―――以上、幽霊を信じるきっかけになったお話でした。
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