ヤンデレが本当に好きなのは俺ですか

@Okuse

第1話 下校

 チャイムがなり、「今日はこれまで」と教師が机の上の教材を片付け始める。生徒たる僕たちは当然、机の上をすでに片付けて帰宅の準備をしてしいた。僕たちの高校にホームルームはない。なぜならホームルームをしても別に頭は良くならないからだ。早く帰ろう。

「帰ろうぜ、りょう」と小川がぼくとの帰宅を要請する。「良いぜ、帰ろう」とぼくは答えた。


 小川とりょうの二人が談笑をしながら教室を出ていく。彼らはいわゆる友達だった。お互いのことを大切に思っていたし、実際に大切にしていた。二人はよく遊びに出かける。昨日は帰りがけに二人で塾に行っていた。白く誠実な教室で二人は、勉強を通じて友情を深め合っていた。塾教師にはもはや何もいうことが無かったくらいだった。二人は賢い。大学進学はいつだって厳しいが、彼らは充分に戦えるはずだ。


「今日は塾いく?」僕はきいた。校門を過ぎた頃だった。

「今日はいけない、妹がさ、、、」

「なるほどね」

小川はシスコンだ。妹と家族愛を高め合うことに暇がない。また彼の妹も秀才だ。そういえば彼の自宅学習のスタイルを聞いたことがなかった。

「家で勉強するとき、何してんの?」

「専らアクティブ相互フィードバック形式だね」

「えっ、意外だ。」

僕と同じネクラ気質に親しみを感じていたので、アフィーで家族愛を育んでいるとは想像がつかなかった。

「でも小川の妹が賢いことに合点がいくな。」

アフィーを行う際にはある程度互いの学力が近い必要があるが、家族のようにもともと絆が深いもの同士で行う場合、学力が低い方が高いものに引きつけられる。この引力を利用する家庭は多く、この「知の引力」を発見したおじさんがノーベル教育賞を受賞したことはあまりに有名だ。

「お前に褒められたと知ったら俺の妹も喜ぶだろうな」

「当然ながら、妹に久しく会ってないわ」

「男女で勉強しても頭良くならならないもんな!」

二人で笑う。男女間での絆は家族を例外にして、あり得なかった。

「さすがの僕でも、お前の妹に会って無駄な時間を過ごしたくないね」

「そりゃそうだろな、俺も万が一りょうがそんなこと言ってきたら、全力で説得、いや説教するね」

人生は有限だ。大切にしよう。

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