1−8 プロローグかもしれないし、違うかもしれない。

 そう心で呟くと、光は淡くなり猫たちの輪郭もふわりとぼやけていく。そして神威がカーテンを開けると、傾いた太陽の光が彼らを照らして――。


「……消えた?」


 一瞬で彼らの姿は世莉の目の前から消えてしまった。


「昇華したんだよ」


「昇華……、そっか、そうなんだ……、えへへ……」


 何となく笑いたくて、でもまだ涙もこぼれている状態で、よくわからないけれどそれでもいいやと笑えば、「ったく」と呆れるような声が落ちてきた。


「ほら」


 その声とともに目の前に差し出されたのは、一枚のハンカチ。

「……」


「要らないなら引っ込めるけど?」


「あ、ありがとうございまっ、 ひゃあっ!」


 変な言葉になったのは、そのハンカチを受け取ろうとした瞬間、また大きな静電気が起きたから。その現象に彼は険しい顔を見せた。


「……お前、何持ってんの?」


「え? 持って? いえ、何にも――、あ」


 思い当たるのはひとつだけ。そう思って世莉はポケットから鈴を取り出した。勿論取り出してもこの鈴は鳴らない。


「それ――、っ!」


 世莉が手にした鈴に彼が手を伸ばすと、やはり静電気が起きて世莉は「え?」と首を傾げた。


「ちっ、俺を拒むなんて」


「はい?」


 意味がわからず聞き返す世莉だけど、彼は「まぁいい」とその手を引っ込めた。


「いずれそれ、貰いに行くけど、穢れないようにちゃんと無くさず持ってろよ?」


「は? なんか全然意味が分からないんですけど!?」


「別に理解しなくていい」


「な、何勝手に完結してるんですか!」


「それより、下で待ってるお友達の記憶消していいか?」


「はい!? そんなこと出来るんですか!? って、そう言えば一緒にここに来た男の人は?」


 世莉の発言に神威は「あぁ、見えたのか」なんて言うから、彼女も察してしまった。そう、きっとあの彼はほかの人には見えなかったのだ。言われてみればここに来る際も、みんな神威のことしか言っていないことに気が付いて、世莉は脱力した。


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