第5-3話
「iDCは
みつるが
「だめ……、そうね」
エレベータの到着を告げる高い音が鳴った。少し遅れて扉が開く。
「やっとですね」
みつるは二人に笑いかけると、かごの中へと入り、ボタンの並んだ操作盤の前に立った。
あきらと一姫も続いて中に入る。
二人がそれぞれ後方の
階数ボタンはまだ押していない。
「誰がしたかは後で考えるとして、人為的に事故を起こすにしても、運転士がいるわけだろ」
あきらは、また思考の方向を変えてみることにした。
「そうですね」
みつるは操作盤の下のパネルをスライドさせた。
「AIで自動制御装置を作動させないことができたとしても、都合よく運転士が手動ブレーキをかけ忘れるなんておかしくないか?」
「手動ブレーキもAIで制御不能にしちゃったとか?」
「少なくとも非常ブレーキは、電気がなくても使えるように機械式だろ」
確信はないが、あきらはすぐに反論した。
「コンピュータを
みつるはスライドしたパネルの下に現れたテンキーを使い、コードを打ち込んでいる。
すぐに扉がロックされる音が響いた。
「人を?」
騙す?
「ブレーキがかからない、と思い込ませるだけで良いでしょう。実際にかからなくする必要がない分楽です」
「そうか……、そうよね」
一姫が横で何度も
「しかし、どうやって?」
「新宿の事故後ということもありますが、運転士というのは多くの人の命を預かる仕事ですから、それだけストレスも大きいのかもしれません。当事者の井上さん以外にも、多くの運転士が会社指定の病院でカウンセリングを受けていたようです」
垂直下方向への加速度を感じた。階数表示用の液晶パネルには、文字化けしたような記号が表示されている。
「特定の人物じゃなくて、不特定多数の運転士に暗示をかけていたのね」
「暗示? 催眠術のようなものか……」
謎が解けたとでも言いたそうな雰囲気で一姫が目を
結局同じ問題が残っているのではないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます