第3-3話

「思いやり?」


「そうだよ。隣の車にドアをぶつけたら可哀そうだろ」


「誰が?」


「だから隣の車の持ち主が」


「違う。誰がぶつけるのよ」


「一姫以外いないだろ?」


「なっ」


 思わず手が出そうになるのを必死にこらえる。怒りが大きすぎて、少し頭がくらくらした。


 どうしてあきらはこんなに意地が悪いのだろう。


「とりあえず、歩きながらにしませんか?」


「……そうだな」


 すねを押さえてかがみ込んだあきらが答える。


「いきましょう」


 一姫はそう言うと、先頭に立って歩き出した。


 かなり広い駐車場だから、車の場所が分からなくなりそうだけれど、みつるさんがいるから大丈夫かな。


 それにしてもあきらは大袈裟おおげさだと思う。


 手は我慢がまんしたけど、足が出ちゃった。

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