第3-4話
ここまでか……。
急速に視界が薄らいでいく。
宇治土は少年の中から現実へと意識を向けた。
『
離れる寸前に感じた少年の想いに、宇治土は
光の届かない深い闇の底から、水面へと浮き上がる感じに似ている。
世界は音を取り戻し、周囲にざわめきが
宇治土は、背中に
「終わったのか?」
片瀬が話しかけた。
「ああ、黒いロングコートを着た男が見えた。おそらく日本人だ」
宇治土は
「日本人……、なのか?」
横浜という立地条件と犯行の様子、そしてなにより長年の経験から、片瀬は外国人の犯行であると予測していたのだろう。
宇治土自身も少年の目を通して感じた男の持つ雰囲気から、外国人だと思っていた。
あの一瞬が無ければ、間違った情報を読み取ることになっていたかもしれない。
「多分な。年齢は二十代後半から三十代、身長は約一九〇センチ、
「わかった。犯人の顔については絵を作成するから、署で詳しく教えてくれ」
片瀬はそう宇治土に頼むと、部下の刑事を大声で呼んだ。
犯人の特徴を全捜査員に伝えるように命じている。
「片瀬……、どうも別の誰かがこの場にいたような気がしてならない。これから直接黒コートの男を探ってみようと思う」
宇治土は振り返り、男が少年を見て
途中、男が視線を向けていた崩れかけた
「待て、宇治土」
片瀬が慌てた声で呼び止めた。
誤って過去に
引力の強さは精神の強さに比例している。対象に
片瀬はそのことを心配しているのだろう。
宇治土はなにも答えず、男の立っていた場所で
「気をつけてくれよ」
止める様子のない宇治土を見て、説得するのを
すぐ横に立って見守っている。
間もなく、男の力の異常さを示す
嵐の中に投げ込まれたような
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