第3-3話
「音はしなかった?」
「夜中まで騒がしかったようです。二時頃に、花火のような音を聞いたという証言もあります」
「花火? 爆竹みたいな?」
「そういう音ではなかったみたいですね。おそらく連続で火の粉が吹き出るような花火ではないかと」
「ほら、ドラゴン花火とか昔遊ばなかったか?」
片瀬が口を挟んだ。
「ドラゴンね……」
花火は知らないが、炎は熱そうだ。
「他に聞きたいことはあるか?」
「いや、もういいよ」
宇治土は遺体の横に座り手を合わせた。
「わかった。すまんが後は頼む」
片瀬は近くにいる警官を数人呼び、誰も近づけないように指示を出した。
宇治土は状態を確かめるように頭を
息を大きく一つ吐くと、手に持った
この遺体が生前に見た最も印象深いシーン。
死の直前に見た場面が、ピンボケのスナップショットのように次々と音も無く浮かんでは消えていく。
今にも泣き出しそうな少女の顔。
投げられた缶。
立てかけられたバット。
吹き飛ばされる影。
重なり合いながら現れるその中に、男が少年に向かって
宇治土はその男に焦点を合わせ集中する。
黒のロングコート、かなり背が高い、顔は良く分からないか……。
残された男の
その姿は
宇治土は次に、吹き飛ばされる少年達の姿を繰り返し再生させた。
なにも視えないが……、この圧迫感はなんだ?
飛ばされる瞬間を何度確かめても、原因となった力の
ループを解除して、さらに先へと進めた。少年が見た過去の出来事であると頭では理解していても、男と
なんだ?
突然真っ赤な火柱が立った。
意外にもそのことに驚いたのか、黒コートの男の気が乱れたのを宇治土は見逃さなかった。
時間にすれば一秒もなかっただろう。
今まで
日本人?
次の瞬間、視界が朱色に染まった。
少年の身体が燃え上がる。
自分の肉体に受けたわけではない。それでも痛みを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます